第24話

「さて、団長。

 そろそろ時間です。

 国王陛下と王太子殿下から受けた密命を果たしましょう」


「そうね、やらなければいけないわね」


 どうやらアンゲリカに策があるようです。

 自力で何とかしようというのは、アンゲリカらしいと言えばらしいです。

 自分たちの命運を人に預けたりはしないのです。

 王太子が勝つことを願うだけの弱い人間ではないのです。

 アンゲリカは自分の命運は自分の手で切り開く人なのです。


「待ってください!

 国王陛下や王太子殿下の密命と言われても、鵜呑みにはできません!

 どうしてもと言われるのなら確認しますから、それまではここで待ってください!

 勝手な真似は許しません!」


「そうは言われても、密命を果たさないといけないのだ。

 君たちも知ってるだろう。

 王太子殿下とアーサー王子の暗闘を」


「……」


 護衛の騎士たちが黙り込んでしまいました。

 王族の権力争いに貴族は直接加担していますが、騎士あたりだと戦々恐々と眺めるだけです。

 今自分が配されている王族の浮沈で、自身の命運が決まってしまうのです。

 特に王宮に配されているような近衛騎士は、近しい王族がいます。

 その王族が権力に近づけば近づくほど、自分たちも栄達に近づけるのです。


 そんな近衛騎士だからこそ、王太子とアーサーの暗闘に気がついているのです。

 二人は密かに行っているつもりでも、家臣達にはバレバレです。

 アンゲリカはそこを突いて突破口を開くつもりなのでしょう。

 ですがその方法が私には全く思いつきません。


「外に出せと言っているわけではない。

 国王陛下も王太子殿下もそんな事は仰られないさ。

 お二人から受けた密命は、ダンジョンに潜ってドロップ品を集めろという事だ。

 これから王位継承の争いが起こるので、それに備えて集めろと仰られたのだ。

 直ぐに護衛して案内してくれ」


「待ってくれ。

 そんなことは一切聞いていない。

 確認するから待ってくれ」


「ダメだ!

 そんな事をすればアーサー王子一派にバレてしまう!

 もしかして貴君らはアーサー王子に加担しているのか?

 ならばすぐに考え直すのだ!

 すでに勝負は決している。

 国王陛下は、王太子殿下に王位を継承される考えを変えておられない。

 わずかでもアーサー王子に加担していると疑われると、貴君らの命取りだぞ!

 悪いことは言わん、考えを改めろ。

 なんなら私から王太子殿下に口添えしてやってもいいぞ?」


「まて、待ってくれ!

 勝手な事を言わないでくれ!

 俺たちはアーサー王子に加担なんかしていない!

 近衛騎士として王家と王国に忠誠を誓っている!

 妙な疑いをかけるのはやめてくれ!」


「だったらなぜ我らの行動を阻害する!

 今までの言動は、アーサー王子に加担して、国王陛下と王太子殿下に味方する我らの邪魔をしているようにしか見えんぞ!」


 アンゲリカの迫力勝ちのようですね。

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