第67話
「上手よ、ベン、今度はこの穴に通せるかしら?」
「だっあぁあああ!」
カチュアとベンが魔術遊びをしている。
カチュアが創り出した水の的に、ベンが創り出した水を当てるのだ。
他人を死傷させないように、攻撃魔法は教えていないが、生活魔法の中には水や火に関係するモノが多かった。
家族のために火種を創り出したり、一日コップ一杯二杯の水を創りだす事は、厳しい環境で生きていくのにとても重要な生活魔法だった。
魔力を増やしたり応用したりする事で、攻撃魔法に転用できるのだが、圧倒的な魔力量を誇るカチュアとベンは、生活魔法が平均的な魔術師以上の攻撃魔法なのだ。
カチュアがベンの側にいる間は、日に日に増大するベンの魔力であろうと、簡単に抑え込むことができる。
だがカチュアがいない時間は、女性魔術師団だけでは厳しくなっていた。
全団員が協力して完成させた結界でも、徐々に破られるようになっていた。
女性魔術師団は危機感を持っていたのだが、簡単な解決法があった。
カチュアがベンを魔術遊びに熱中させて、魔力の全てを使うように誘導すれば、ベンは魔力切れで昏倒して熟睡するのだ。
カチュアがベンの相手ができなくなる前に、ベンを疲れさせてくれるようになって、女性魔術師団はひと息つくことができた。
だが直ぐに次の問題が起きた。
カチュアの用事が終わる前に、ベンが眼を覚ます事だった。
それはカチュアが寝ている間にベンが眼を覚ます事も同じだった。
カチュアは「何かあったら直ぐに起こしてくださいね」と言うのだが、育児で疲れた皇后陛下を無理に起こすことは、家臣には凄く難しいのだ。
だがそれは、直ぐにレオが解消してくれた。
一時的にベンが魔術に夢中になったことで、放置されていた混血虎獣人の子供側近達を、遊びながら鍛錬していたのだ。
彼らが、起きた直後にむずかるベンを遊びに誘い、負かしてしまったのだ。
ベンは簡単に負けたことに驚愕し、負けん気をだした。
必死で身体を動かし、他の子供達に負けまいとした。
無意識に魔法を使おうとすると、事前にそれを察したレオに手厳しく叱られる。
普段は絶対に噛まないレオが、教育的甘噛みをするのだ。
ベンはガン泣きしそうになっていたが、必死でこらえていた。
周りの側仕え役の侍女や女官は、あまりのことにオロオロするが、カチュアがレオに絶対的な信頼をしている上に、マリアム後宮総取締がベンのやり方を認めているので、放置するしかなかった。
泣くのを我慢したベンは、完全獣形態となって、側近混血虎獣人に負けまいと身体を動かした事で、カチュアがいなくてもベンを疲れさせるとこができるようになったが、これによりベンは魔術と体術の両方を遊びながら学べるようになった。
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