第68話
ベンはメキメキと強くなっていった。
父親の資質も受け継いでいるベンは、混血同士の遊びでは負けなくなった。
そこで純血虎獣人の側近も配されたのだが、ベンほど厳しい指導をされていない名門出身の子供では、とてもベンの相手にはならなかった。
それどころか、実家で卑しい雑種と聞いていた混血側近いさえ任され、早々に実家に帰されるという、回復し難い汚名を受けることになった。
傍系皇族と名門譜代功臣家の大半が没落した事で、新たに権力を得ていた純血虎獣人貴族家は、この事態に慌てふためいた。
権力の中枢に喰い込めると思い込んでいたのに、この醜聞は致命的だった。
この屈辱的は汚名を挽回するには、後宮から送り返された子供を徹底的に鍛え直すしかなかった。
一方負かした混血児達は、親身になってくれる後宮の侍女や女官から、負かした子の親からの報復に気をつけるように教えられていた。
悪質な嫌がらせや暗殺さえあるから、庇護してくれるベン皇子やカチュア皇后の側から離れらいようにと言われていた。
同時に嫌がらせを跳ね返せるような強さを持ちなさいとも言われていた。
混血児達は、自分達が強くなるための努力と共に、ベン皇子を強くしようとした。
その子供達の訓練や遊びや勉強を、身重のカチュアは、リドル皇子の世話をしながらニコニコと眺めていた。
混血児達の母親代わりともいえるほど可愛がっていた。
時に思いついて、混血児にも魔術を教えようとしたが、残念ながら後宮にいる混血児には魔力を持つ者はいなかった。
問題はカチュアの魔術勉強だった。
女性魔術師団員では教えることができなくなっていたので、新たな魔術や魔術知識を得るために、皇国中の魔術に関係する書を集めさせた。
とは言っても、強権で奪うと皇国の法による統治が崩壊してしまう。
だから借り受けて写本してから返すという方法がとられた。
表向きは、貴重な書が散逸喪失されることを防ぐためという事だった。
そのための法律、書籍保存法も作られ、全ての書籍は皇国政宮図書館、皇国後宮図書館、皇国副都図書館、皇国副都後宮図書館、セントウィン大王国政宮図書館、セントウィン大王国後宮図書館の六カ所で保存されることになった。
だが全ては表向きの話で、本当はカチュアのためだった。
同時にアレサンランド皇国が内乱を起こした時の事も考えられていた。
内乱で貴重な書が散逸喪失しないように、内乱で皇都が襲撃破壊された時のために、副都でも保存された。
最悪副都まで襲撃破壊された時の事も考え、皇国を放棄して虎獣人族の故国であり、虎獣人族しか住むことを許されなくなった、セントウィン大王国の首都にも保存されることになった。
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