第62話

 アレサンドが政宮に来ない事に困り果てたエリック達側近忠臣重臣は、最終的にカチュアに頼った。

 前回のカチュアの妊娠中に、アレサンドのカチュアに対する執着が少なくなり、政務や子作りに励んだことを思い出したのだ。

 カチュアに三人目の子供を妊娠して欲しいとお願いしたのだ。


 普通の関係なら、人族に虎獣人族皇帝の子供を生んで欲しいなど、側近忠臣重臣が望むことなどない。

 だが、皇帝に純潔虎獣人族の後継者を作ってもらうためには、いったんつがいの呪縛を弱めてもらわなければいけないのだ。

 側近忠臣重臣は、皇国を支える皇族の数を増やしたかったのだ。


 この案が通ったのは、エリック以外の側近忠臣重臣が、ベン皇子に魔法の才能がある事を知らないからだ。

 側近忠臣重臣の全員ではないだろうが、ベン皇子に魔法の才能がある事を知ったら、警戒して子供を作ることを反対する者もいるだろう。

 虎獣人族が魔法を使えるようになるメリットを考え、子孫配下に魔法を使えることを望む愚か者が出て、混血種が増える事に拒絶感を持つ者が多いだろう。


 カチュア自身が普通に幸せに育ったいたら、自分は子供を作るための道具ではないと、怒りを感じたかもしれない。

 だが、カチュアはとても不幸な生立ちだった。

 だから、愛され望まれることに幸せを感じる事ができた。

 愛する家族が増える事に喜びを感じる事ができた。


 子育ては大変だったが、ベン皇子とリドル皇子が生まれた事に幸せを感じていた。

 乳母や側近がいてくれるので、自分が辛い時には任せる事もできた。

 何より人族よりもとても丈夫な子供で、成長も早かった。

 完全獣形態だと、授乳以外全く世話がかからない。

 その授乳も、深夜は乳母に任せる事も可能であった。

 実際にはほぼすべて自分で授乳していたが、辛いよりも幸せの方が大きかった。


 だから、側近忠臣重臣に三人目を作って欲しいと言われた時も、怒りを感じる事無く受け入れる事ができた。

 自分が虐待されて孤独に育っていたので、無条件で愛し慕ってくれる子供が増える事は、嫌な事ではなかった。

 

 アレサンドは盛りのついた状態だった。

 一日に何度も何度も何度もカチュアを求めた。

 カチュアがへとへとに疲れてしまうほど求めた。

 虎獣人族なら普通の事だが、人族には激し過ぎて、普通なら嫌がる所だが、辛い生立ちのカチュアには嫌なだけではなかった。


 ただ、一日では済まない。

 カチュアが拒絶しない限り、連日連夜続くのだ。

 でも今のカチュアには子育てと魔術を覚えるという優先すべき事があるので、アレサンドは満足するほどは相手をしてもらえなかった。

 


 

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