第5話

「ギャァァァァ!」


 ポチはバースに放たれた刺客を返り討ちにした。

 ネロから話を聞いたポチの独断だった。

 翌日家の前に死屍累々の状態を見たバースは、急ぎ領主に直訴した。

 だが一歩遅かった。

 バースではなくネロとポチにとって遅かった。

 郡代が動いたのだ。


 抱えていた手下全てを返り討ちにされた意地悪爺さんのハンスが、夜のうちに郡代に知らせ、郡代が騎士団と徒士団を勝手に動員したのだ。

 だが大掛かりになった分時間がかかった。

 早起きのバースは敵が来る前に家族と共に隠れた。

 ネロとポチは奥山に狩りに行った。


 郡代軍はハンスと共に村中を探し回ったが、バースもネロもポチも見つけられなかったが、ネロとポチが奥山に向かったことだけは分かった。

 郡代軍は急いで奥山に向かった。

 奥山に向かったネロとポチだが、ポチが隠し金を見つけだした。

 昔盗賊団が隠したモノだった。


 だがそこに、二人を探して郡代軍がやってきた。

 ネロとポチを殺して、口封じするためだった。

 ポチは必至で戦った。

 獅子奮迅の戦いだった。

 あまりに激しい戦いで、巻き添えを恐れたハンスが逃げ出すほどだった。


 ポチは命懸けでネロを護り切った。

 だが相手は騎士団と徒士団、二十騎二百兵だ。

 いくら戦闘力の突出したポチでも厳しい。

 まして年老いて動きの遅いネロを護りながらの戦いだ。

 臨機応変、ヒットアンドアウェイの戦法がとれない。

 満身創痍となり、最後は郡代を道連れに相打ちとなった。


 ネロはポチの遺体を家に運び、庭に埋め墓を建てた。

 再び奥山に行って、ポチが探しだしてくれた宝を持って帰った。

 だがまたハンスが言いがかりをつけてきた。

 村の共有財産だから、宝をよこせと。

 ハンスも必死だったのだ。

 郡代が死んでしまった以上、新たな後ろ盾が必要だ。

 ネロから宝を奪って、それを賄賂に使おうとしたのだ。


 だがずっとハンスの言いなりだった村年寄が裏切った。

 いえ、安全策を取ったのだ。

 不当に奪うのではなく、ネロのモノと認めたうえで、ハンスに借りている返金にあてるように言っただ。

 今更過去に罪を隠せいるわけがないのに、今回だけ正しい裁きを勧めたのだ。


 どうしても金が欲しいかったハンスはその案を飲んだ。

 これでネロの借金はなくなった。

 ポチを失った哀しみと、借金がなくなった安堵で、ネロはなかなか眠れませんでしたが、朝方ようやく眠ることができた。


 浅い眠りの中で、ネロはポチの夢をみた。

 その夢でポチはネロに言うのだ。

 ポチの墓に育った木を切って臼と杵を作れと。

 作った臼と杵を餅をつけと。

 

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