第6話

 翌日ネロが起きると、夢の通り大木が生えていた。

 急いで夢の指示通り、木を切って臼と杵を作って餅をついた。

 驚いたことに、餅は金貨に変じた。

 ついてもついても金貨が生みだされる。

 みるみる千枚二千枚の金貨となり、遂には一万枚の金貨となった。


 だがここでまた意地悪爺さん、村長ハンスが言いがかりをつけてきた。

 ネロの屋敷は借金のかたで自分のモノになっている。

 だからその庭に植わっていた大木を切って作った臼と杵は自分のモノだと。

 だがこれを村年寄をはじめ村民の誰も認めなかった。


 ネロを護ろうとしたとか正義に目覚めたとかではない。

 この頃には、ハンスの後ろ盾だった郡代が、ポチに騎士団徒士団ごと殺された噂と、農民代表のバースが領主に直訴に行った噂が広まっていたのだ。

 誰もが保身のためにハンスを見限ったのだ。


 だがこれで諦めるハンスではなかった。

 夜ネロの家に忍び入ると、臼と杵を盗み出し、餅をついたのだ。

 だが金貨など生み出されなかった。

 生み出されたのは毒虫だった。

 毒虫はハンスを襲い、肉を喰いを、毒で苦しめ、卵を産み付けた。


 地獄の苦しみの中でも、ハンスの悪心は変わらなかった。

 ネロがこれ以上金貨を手に入れるのが妬ましく、臼と杵を燃やしたのだ。

 だがその頃、ネロはまたポチの夢を見ていた。

 ポチは臼と杵が焼かれたのお教え、その灰を桜にかけるように伝えた。


 ネロは村年寄に臼と杵が盗まれたことを訴え、二人でハンスの家に押し入った。

 そこには毒虫に喰われ刺され卵を産み付けられて、半死半生のハンス一家がいた。

 もはやハンスに何の力もないと確信した村年寄は、ハンスを牢屋仕入れた。

 下劣な手のひら返しだ。


 そこに領主を案内してバースが帰ってきた。

 全てを聞き、自分の目で確認した領主は、ハンスはもちろん、今迄悪事に加担していた村年寄以下多くの村民とその家族を奴隷に落とし、三年で必ず死ぬと言われる鉱山で働かせることにした。

 死んだ郡代と騎士団員徒士団員も調べられ、悪事に加担していた者は処分された。

 処分した者達の家財を没収し、領主のモノとなった。


 ネロとポチが郡代と騎士団徒士団を殺したことは不問とした。

 一万枚の金貨もネロのモノと認めた。

 だが税金として四割四千枚の金貨を納めさせた。

 領主は大変満足して城に帰って行った。


 全てが終わって、ネロはポチが夢で指示したように、桜に灰をまいた。

 見るまに花が咲き桜吹雪が舞った。

 その桜の花びらが集まり、ポチの姿となり、ポチが蘇った。

 しかもポチは、人間に変化できるようになっていた。

 桜井に灰を撒いた時、一緒に灰を浴びたネロは、みるみる若返った。

 ネロとポチは結婚して、幸せに暮らしました。

 めでたし、めでたし。

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