第26話

 私たちは王族たちの追撃を考えて、一直線にダンジョン主の所に向かいました。

 前回のように、能力を向上させるために、ダンジョンを周回しません。

 そして、ついにまたダンジョン主と遭遇できました。

 前回は十二人パーティーでようやく斃せたダンジョン主です。

 それをたった二人で斃そうというのです。

 狂気の沙汰と言われてもしかたありません。


 アンゲリカと私はアイコンタクトをとって戦いました。

 事前に打ち合わせていたように、私がダンジョン主の攻撃圏外に陣取り、支援魔法や回復魔法を使って、アンゲリカを癒すことに専念します。

 私の支援を受けたアンゲリカが戦うのです。


 私は眼を見張りました!

 アンゲリカがさらに強くなっていたのです!

 この期に及んで、まだ実力を隠していたのです。

 ジルべリア王家に対する警戒のために、実力を隠していたのでしょう。

 必要な事だったとは理解します。

 理解しますが、寂しく腹立たしいのも確かです。


 そのアンゲリカでさえ、ダンジョン主の速さについていくのが精一杯でした。

 パワーも少しダンジョン主に劣ります。

 ですが技、技術が段違いです。

 力負けしても、速さで押され気味になっても、剣と体裁きで受け流し、的確に反撃を叩きこむのです。


 普通の敵が相手なら、一撃で粉砕できる強力な一撃です。

 魔熊どころか、亜竜種の鉤竜でも一撃で斃せる破壊力です。

 急所をとらえれば、亜竜種の禽竜でさえ一撃で斃せるかもしれません。

 そんな一撃を数十回叩き込んでようやく斃せました!


 ですがそれでも凄い快挙です。

 前回十二人がかりで斃した時は、数百回攻撃を叩きこんで、ようやく斃すことができたのです。

 それに、戦闘前に身体強化の支援魔法や防御魔法陣を展開してただけで、戦闘中に治癒魔法を使う事もありませんでした。

 これならアンゲリカ一人でもダンジョン主が斃せてしまいます。

 私など不要なのです……


「さて、願いがかなうか確かめないといけないな」


 そうです!

 落ち込んでいる場合ではありません。

 私たちの将来が決まる願いなのです。

 私たちの潜在能力の中に、事前に決めていた力が宿っていれば、願いはかなえられるでしょうが、そうでなければせっかくのドロップ品が消えてしまいます。

 前回私は、聖女の力を発揮できるようになりたいと願い、かなえられました。

 アンゲリカと私はドロップ品を手に取り、一緒に願ったのです。

 姑息な方法ですが、確率を少しでも上げるためです。

 もしかしたら、ルール違反で罰を受けるかもしれません。

 何の効果もなく、ドロップ品が消えてしまうかもしれません。


「私たちがいつでも自由にこのダンジョンに出入りできますように。

 ここに戻ってこれますように」

 

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