第27話

「やはりここでしたか。

 しかもたった二人でダンジョン主を斃されるとは!

 まだ力を隠していたのですね、アンゲリカ嬢。

 やはり貴女たちは王家に迎えないといけませんね。

 どうでしょう、私の妻になりませんか?

 聖女オードリーは正妃に迎えさせていただきます。

 アンゲリカ嬢は側妃に遇させていただきます。

 恨みを晴らしたいと申されるのでしたら、ヘプバーン王国に攻め込み、国王とグレイスの首を獲ってきてあげましょう」


 ジルベスタ王太子殿下が何か言っています。

 レンブラン国王とグレイスには恨みがあります。

 ありますが、それほど強いモノではありません。

 今はそん事より将来のことが大切です。

 これからどう生きていくかの方が大切なのです。


「オードリー、魔法でここから出られるか試して。

 ダメだったら私が試す。

 それでもダメだったら一緒に試す。

 それでもダメだったら、今回の願いはかなわなかったと諦める。

 そしていったん王太子の条件を受け入れて、次の機会を待つ。

 いいね?」


 私は小声で話しかけるアンゲリカに強くうなずきました。

 最初から決めていたことです。

 王太子が勝っていたら、逃げられない場合は降伏する。

 ランハルト王子が勝っていたら、死力を尽くして戦う。

 戦って活路を切り開くと!


 私はアンゲリカの手をさぐりました。

 別れ別れにならないように、強く手をつなぎました。

 思わず恋人つなぎしてしまいました。


「おい、おい、おい。

 そんな関係だったのかい?

 調べた範囲ではそんな情報はなかったんだけど?

 まあ、いい。

 少なくとも男がいないのは確かだからね。

 で、どうするんだい?

 まさか戦うおというのではないよね?」


 私は鮮やかに記憶している、ヘプバーン王国のダンジョンを思い出しました。

 ダンジョン主の間を思い出しました。

 団をあげて初めて斃したダンジョン主です。

 忘れるはずがありません。

 ですが今のアンゲリカと私なら、二人でも負ける事にない相手です。

 しかしダメでした。

 いくら願い祈っても転移することができませんでした。


 私のアイコンタクトを受けて、アンゲリカが試しています。

 願い祈っているのでしょう。

 ですが、ダメでした。

 アンゲリカ単独でも転移することは不可能でした。

 最後はアンゲリカと私が同時に願い祈ることです。

 これでダメなら、一旦投降するしかありません。


「ふう!

 なにを躊躇っているのかな?

 それとも、試してる?

 まさか?!

 取り押さえなさい!

 逃がしてはいけません!

 ですが傷つけてはいけません!

 二人とも私の妻になる人です!」


 お願い!

 転移させて!

 

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