第2話

「お爺さん、お爺さん、だいじょぶですか?」


 コボルトは必至で看病しました。

 コボルトが目覚めた時、心優しいお爺さんは意識を失っていました。

 三日間飲まず喰わず、不眠不休でコボルトを看病していた心優しいお爺さんは、コボルトが意識を取り戻すのを確かめたその場で、気を失ってしまったのです。


 コボルト自分の姿を確認して、直ぐに助けられたことに気がつきました。

 受けた恩には命懸けで報いるのがコボルトの掟です。

 いえ、習性と言っていいくらい本能的な事です。

 まあ、コボルト内にも種族があって、傲岸不遜な種族もいるのですが、少なくとも心優しいお爺さんに助けられたコボルトは、恩を返す事に命をかける性格です。

 今度はコボルトが心優しいお爺さんを助けようとしました。


「大丈夫だ。

 心配はいらないよ。

 薬草を集めてある。

 それを煎じて飲めば、君も私も元気になる。

 今は眠らせてくれ」


 心優しいお爺さんは一瞬意識を取り戻し、そう言ってまた昏倒しました。

 コボルトは心配でしたが、まだ両の脚の骨が治っていません。

 しかたなく心優しいお爺さんの言う通りにしました。

 心優しいお爺さんは色々な準備をしてくれていました。


 雨が降っても大丈夫な場所にコボルトを運び、炉も組んでくれていました。

 沢山の竹を切り出し、水も蓄えてくれていました。

 言葉通り、ケガ用の薬草だけでなく、滋養強壮になる薬草も集めてくれていましたが、唯一ないのが食糧でした。

 しかたなくコボルトは、脚の負担をかけないですむ範囲の地面を掘り、ミミズや昆虫の幼虫を集め、食糧としました。


 昏倒した心優しいお爺さんは、直ぐに高熱を発してしまいました。

 コボルトは心優しいお爺さんが用意した薬草を調合して、舌を上手に使って口移しで飲ませてあげました。

 それはミミズと幼虫のスープも同じです。

 ミミズは熱さましの薬にもなるので、コボルトは一生懸命探しました。


 お爺さんは丸一日眠っていましたが、半日程度で熱が下がりました。

 薬草とミミズの効果でした。

 それに加えてコボルトの豊かな毛並みが、心優しいお爺さんを寒さから救い、健康を取り戻す助けとなりました。


 コボルトの骨折は急速に治りました。

 人間なら六週間かかるところが、このコボルトは一週間で治りました。

 コボルト族の中でも能力が高いのか、神の恩寵があるのかもしれません。


「お爺さん、お名前を教えてくださいますか?

 恩人の名前を知らないではいられません。

 それと私に名前を付けてください。

 恩を返すまではその名を名乗らせていただきます」

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