第7話

「ガブリエーレ、左の反応が遅い!

 直ぐに改められないのなら盾を上手く使え」


「はい!」


「レオナルド、足元が疎かだぞ!

 相手は人型だけではないのだぞ!

 ヘビ型やトカゲ型の毒牙も考慮し、バックステップを常に考えておけ」


「はい!」


 アンゲリカの指導が的確で厳しいです。

 今回新たに加えた貴族家騎士家出身の部屋住みが、まだ一人前には程遠いです。

 私の希望がなければ、パーティーに加えられない実力です。

 無能だとか弱いと言うわけではありません。

 対人戦闘なら王国でも有数の戦士です。

 五回の前世では、死の前には著名な冒険者になっていました。


「フランチェスカ、ガブリエーレに変わって左前」


「はい!」


「エンマ、レオナルドに変わって中央」


「はい!」


 男性冒険者は大切に育てなければいけません。

 別に女性冒険者ならぞんざいに扱ってもいいと言っている訳ではありません。

 私の結婚相手の候補ですから、無駄死にさせたくないだけです。

 将来性が高いのが分かってる部屋住みなのです。

 無理をさせて殺してしまうのは愚かな事です。


 少しでも負傷したら予備の女性冒険者と交代させます。

 あ、女性冒険者も同じですよ。

 女性冒険者だからと言って、重傷を負うまで戦わせる訳ではありません。

 男性冒険者と同じように少しの負傷で後衛と交代させます。

 しばらくは収入面が低下しますが、堅実に強くなるためには必要な事です。


「アウロラ、盾を使って。

 ジネヴラ、弓を使って」


 このダンジョンは思っていた以上に危険です!

 事前情報に闘蜂の存在はありませんでした。

 空中を立体起動する魔蟲を斃すのは非常に難しいのです。

 しかも強力な毒を持った針を尾の先に持っています。

 牙もなかなか鋭くて、生身だと肉を喰い千切られます。


 蜂毒は即死する事もある猛毒です。

 特に二度刺された時には、自身の免疫活動を誤作動させて死に至るので、通常の解毒薬では治癒できないのです。

 更に言えば、治癒魔法は自身の回復力を増大して治癒する機序になっているので、治癒魔法を使う事で逆に即死してしまうのです。


「私達が盾になります。

 魔法を使える方は中に入ってください!」


 クリスティアンが進んで最前線にでてくれます。

 命を盾に他の者たちを護ろうとする気概があります。

 軽く惚れてしまいました。

 クリスティアンの言動にならって、いったん後ろに下がっていた男性冒険者が前に出ています。

 やはり前世で名を高めていただけの事はあります。

 

「盾と板金鎧を上手く使え。

 皮鎧より防御力が低い者は絶対に前にでるな!」


 アンゲリカは的確な指示を出しながら、みるみる闘蜂を撫で斬りにしていきます。

 想定していた以上の訓練ができた上に、いい収入になったようですね。

 

 

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