第14話
「そろそろ国境だ。
警備兵はいないと思うが、油断はするな。
万が一見つかったら容赦せず殺せ。
私たちは王太子殺しの犯人になっている。
王国軍も領主軍も手加減などしてくれん。
わずかな躊躇が死につながると思え」
「「「「「はい」」」」」
私たちは国を捨てることにしました。
国王が真の敵だと分かった以上、グズグズ考えている時間はありません。
少なくとも私は、この国で生き残ることは不可能です。
王家を滅ぼし私が女王になるか、現国王を弑逆して別の王族を国王に戴冠させない限り、この国で生きていくことは不可能です。
他の団員がついてくるかどうかは半信半疑でしたが、団長の責任として、ついてくる者は受け入れると断言しました。
思いがけず全員がついてくると言いました。
なかにはその場の雰囲気に呑まれた者もいたかもしれませんが、団員は一味とみなされて皆殺しだという話を以前にしていましたから、それが国を捨てる決断をさせたのかもしれません。
なにより実の息子の恋人を奪うという国王の異常な行動が、団員に国に残り王に仕える選択を忌避させたのかもしれません。
逃亡の準備は直ぐにできました。
もともとクランとして魔境やダンジョンを巡って暮らす予定だったのです。
パーティーごとに別の魔境やダンジョンに挑戦する事も考えていたのです。
なにより実家に頼らずに生きることを選んだ者たちの集まりです。
実家では部屋住みの厄介者だったのです。
現金と魔法薬などのかさばらないモノだけを持って、急いで逃げ出しました。
逃走経路はアンゲリカが決めてくれました。
過去に何度も、国境を警備する関所を通らず、密かに外国に行っていたようです。
いったいどんな依頼でそのような事をしたのか?
とても興味はありましたが、聞くのはやめました。
裏の仕事だったら教えてくれるはずがありませんし、そんな事を聞くことでアンゲリカに嫌われたくなかったからです。
街道を使う場合の三倍の日数がかかってしまいました。
魔境やダンジョンを避け、街や村も避け、できるだけ人目につかないようにしたからですが、それ以外にも理由があります。
襲ってくる野獣を退治しながら、食料になる獣を狩りながらの逃避行だったからですが、その苦難の多い旅が、確実に私たちを鍛えてくれました。
「よおおし。
ここまでくれば大丈夫だ!
ジルべリア王国はヘプバーン王国と敵対している。
ヘプバーン王国が依頼しても俺たちを狙う事はない。
堂々と冒険者登録ができる。
この街には冒険者ギルドがあるから、まずは登録する」
アンゲリカがテキパキと話を進めてくれます。
本当に頼りになります。
アンゲリカがいなかったらどうなっていたかと思うと、ゾッとしてしまいます。
ですがいつまでもアンゲリカに頼ってばかりではダメですね。
私も頑張らなくてわ!
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