第27話

「カチュア様、このような理由で、アレサンド様に側室を迎えなければいけなくなってしまいました。

 どうかご理解願います」


 アレサンドの元傅役で股肱之臣、シャノン侯爵エリック卿が事情を話します。

 シャノン侯爵は後宮に入ることができないので、アレサンドの許可を受けた後宮女性が入ることを許されている、アレサンドが後宮以外で寝起きする私的宮殿、中宮でカチュアとシャノン侯爵が話している。

 もちろん、自分以外の男とカチュアが話す事に少々苛立ちながら聞いているアレサンドも、結構大きくなったレオも一緒にだ。


「シャノン侯爵の言う事はもっともです。

 虐待され、ちゃんとした教育を受けていないとはいえ、私も公爵家の令嬢です。

 政略結婚の大切さは重々承知しています。

 それに、私の子供には兄弟姉妹仲良く暮らして欲しいのです。

 それは父母を同じくする兄弟姉妹だけでなく、母親の違う異母兄弟姉妹もです。

 だから一つだけ条件があります。

 兄弟姉妹が争わないように教育してくれる女性を選んで欲しいのです」


 とても厳しく難しい条件だった。

 虎獣人族の本能に逆らうような条件なのだ。

 虎獣人族も弱肉強食の社会で、虎ほどではないにしても、群れではなく個で縄張りを持って生きる本能がある。

 人の本能も併せ持ち群れや国を作ることは出来るが、個で争う事も大好きなのだ。


 特に国の後継者を争う場合は、兄弟姉妹で直接殺し合うことも辞さない。

 同時に徒党を組んで後継者争いをする事を恥と思う本能がある。

 それが、虎獣人族が内乱を起こしにくい要因でもあった。

 それを、兄弟姉妹仲良くしながら後継者を選べというのは、至難の業なのだ。

 だが、新たな試みと考えることもできる。


「分かりました。

 そのような者を探してみます。

 ですが、今から考えていて欲しいのです。

 虎獣人族にとって、大公殿下は、いえ、国王陛下は強さの象徴です。

 みなの眼にはっきりと最強であることを示さないといけません。

 兄弟姉妹殺し合う事なく、強さの優劣を証明する方法を考えていてください」


「分かりました。

 アレサンドと一緒に考えてみます」


 にっこりと笑いながらカチュアにふられたアレサンドは、内心大汗をかくほど慌てていたが、それをカチュアに知られたくなくて、慌てて返事した」


「あ、ああ、当然だ。

 ちゃんと考えるとも」


 そうは答えたアレサンドだが、弱肉強食で兄弟姉妹殺し合って、最強の後継者を選ぶのが正しいと思っていた。

 まあ、アレサンドの時は、あまりに突出した強さだったので、死にたくなかった兄弟姉妹が進んで臣籍降下して後継者争いから逃げたから、兄弟姉妹で殺し合うような惨劇は起こらなかったのだが。


 

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