第4話
「私はフレンチ王国の王太子でバーツといいます。
聖騎士の務めとして、諸国を巡り武者修行しています。
たまたまこの国立ち寄って、この機会を得ました。
カチュア公女様には哀しく苦しい現実でしょうが、私には好機です。
このような事がなければ、食人の悪行を知ることができなかったでしょう」
「バーツ様。
私の事はカチュアと呼び捨てにしてください。
聖騎士で王太子のバーツ様に敬称で呼ばれるといたたまれません。
それと謝っていただくことではございません。
このような状態になっているのを見過ごしていた私が、公女として至らなかったのですから」
私はとても驚きました。
私を助けてくださったバーツ様が、フレンチ王国の王太子だったとは!
フレンチ王国といえば、太陽神殿と月神殿の影響力が強く、信心深い国です。
その影響か、歴史に名を残すような名立たる聖騎士を、数多く輩出しています。
そのような国だからこそ、王太子という責任ある地位の方が、単騎で武者修行するような危険な真似を許すのでしょう。
だからこそ、様付けなど恥ずかし過ぎます。
今日までの無責任な生活をおもうと、恥ずかしくていたたまりません。
だから呼び捨てをお願いしたのです。
素直に今までの事を詫びたのです。
詫びなければ、次の行動がとれません。
「分かりました。
これからはカチュアと呼び捨てさせてもらいます。
その代わり、私の事もバーツと呼び捨てにしてください。
正直に言うと、堅苦しい宮廷作法が苦手なのですよ。
武者修行中くらい、自由に気楽に生きたいのです」
「分かりました。
私もバーツと呼び捨てにさせていただきます。
ではバーツ、私はこれから何をすればいいのでしょうか?
情けない話ですが、私は王宮の中しか知りません。
王宮の外に出たことが一度もないのです。
これから何をすればいいのか全く分からないのです」
私は率直に話しました。
全てを話しました。
全てとはいっても、何も気がついていなかった愚かな私です。
イスファンに聞いたことしか知りません。
それを話したうえで、私がこれからやるべき事の教えを請いました。
バーツは王太子で聖騎士です。
責任ある王侯貴族が優先してやるべき事も、聖騎士としてやるべきことも、誰よりも理解していると思ったのです。
それに、邪魔になるのも嫌でした。
自分が無力なのは分かっています。
無力な人間が身勝手に動けば、バーツの足を引っ張ることになります。
今日逃げようとしたときに、イスファンの足手纏いになりました。
心を入れ替えて助けようとしてくれた者達の足手纏いにもなりました。
「分かりました。
だったら神輿になってもらいましょう」
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