第43話
「陛下。
サヴィル王国がコータウン王国に侵攻いたしました」
「戦況はどうなっている?」
「密かに送り込んでいた戦士団千兵によって、サヴィル王国侵攻軍は壊滅いたしましたが、この後はどうしたしましょうか?」
予想通りの愚かな行動だった。
一番最初に動くのはサヴィル王国だと、連合皇国首脳部は予測していた。
コータウン王国は連合皇国に参加している属国である。
だが以前はサヴィル王国の属国で、莫大な貢物を要求され、亡国寸前だった。
武力を背景に、無理矢理サヴィル王国の第四王子を養嗣子に押し付けられ、王家乗っ取りをされていた。
利発で民想いと評判だった第一王子を廃嫡に追い込まれた家臣領民は、小国だからこそ王家に近く、反サヴィル王国の機運が高まった。
それでも、無理矢理入り込んだ第四王子が賢明で、謙虚で国民想い家臣想いの行動をとっていたら、話は変わっていただろう。
だが甘やかされて育ったのか、無理難題を家臣国民に押し付け、遊興費のために重税を課し、正室となったコータウン王家の王女を蔑ろにした。
更に家臣国民の未婚女性や既婚女性まで嬲り者にしたのだ。
そんな時に連合王国から属国参加案内が来た。
無理強いするわけでもなく、下手に出てくるわけでもない。
淡々と、来る者拒まずの去る者追わずの連合参加案内だった。
コータウン王国は少し迷っただけで連合参加を決断した。
王家も家臣国民も、このままでも地獄だと思っていた。
連合皇国が人族に対して差別に満ちた国でろうと、今以上に悪くならないと考えて、わずかに迷っただけで連合参加を決めた。
それには距離の問題もあった。
コータウン王国は連合皇国から遠く離れていた。
間にはサヴィル王国も含めて三カ国もの国があった。
だから本当に武力的に支援してもらえるかどうか、不安な面はあった。
だが、すでに亡国を覚悟で、第四王子を人質にする覚悟を決めていたのだ。
少しでもサヴィル王国を牽制できればいい。
そんな藁にもすがる思いで、コータウン王国は連合皇国に参加した。
その決断は正解だった。
第四王子を人質にして搭に幽閉し、賠償金を請求しても、サヴィル王国は直ぐには攻め込んでこなかった。
サヴィル王国は連合皇国を恐れていたのだ。
そのまま恐れて、賠償金を支払えばよかったのに、サヴィル王国は判断を誤った。
サヴィル王国も、連合皇国との間に二カ国もの国がある事で判断を誤った。
幾ら戦意旺盛な虎獣人族でも、敵対行動をとっていな国を二つも滅ぼしながら、サヴィル王国に攻め込んでは来ないと思ってしまったのだ。
二カ国の軍にも民にも気がつかれることなく、いや、潜伏するコータウン王国の軍にも民にも気がつかれることなく、千もの将兵が伏せているなど誰も思いつかない。
「コータウン王国」
都市と周辺部だけの小国、サヴィル王国の属国から連合皇国の属国に。
「サヴィル王国」
コータウン王国の属国離脱に怒り、侵攻して連合皇国に滅ぼされる。
連合皇国との間に二カ国があり領地を接していないと油断した。
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