第2話
「アンゲリカ、そろそろ魔境かダンジョンで実戦訓練がしたいのだけれど?」
「駄目でございます!
そのような危険な事はさせられません!」
私はアンゲリカに話しかけているのに、王家が派遣した戦闘侍女がうるさい!
私は自分を鍛えたいのです。
どれだけ訓練を重ねても、実戦経験がないのでは、家出するのに不安です。
貴族令嬢が家を出たら、どれほど危険で惨めなのかは、五度の前世で嫌というほど分かっています。
「役立たずね」
「何を仰います!
我らは王家から遣わされた戦闘侍女です。
いくら王太子殿下の婚約者であろうと、言っていいことと悪いことがります!」
「だってそうではありませんか。
王家から遣わされて護衛だ戦闘侍女だと言いながら、伯爵家程度の戦闘侍女にも勝たず、あまりの弱さに足手まといになって私がやりたいことができなくなる。
それを役立たずといわずに何といえばいいのかしら?
教えてくださいますか?」
「……」
悔しいでしょうね。
私には弱い者いじめの趣味はありませんから、言いたくて言っているわけではありませんが、私も命がかかっているのです。
妥協したり諦めたりはできないのです。
「命が惜しいのならそう正直に仰いなさい。
そうすれば護衛の任務から外してあげます。
私は信頼できる私の戦闘侍女だけを連れて魔境に行きますから」
「それはなりません!
絶対に駄目です!」
「だあかあらあ、命が惜しいのならそう仰い。
私の戦闘侍女がいますから、貴女方はついてこなくて大丈夫なのですよ。
役立たずの足手まといなど、目障りなだけですからね」
「オードリー御嬢様。
そのように本当の事を言うと傷つきます。
それにどうしても魔境やダンジョンに行きたいのなら、アントニオ王太子殿下に言わないと、彼女達も勝手に認められないですよ」
悔しそうに憎しみを込めた目で私を見ていた王家側の戦闘侍女たちが、アンゲリカの言葉にほっとしています。
命が惜しいから魔境やダンジョンにはいきたくないけれど、彼女達も私が不義を働かないように、監視はしなければならないのですよね。
どれほど罵られても、引けない気持ちは分かります。
問題は王太子が認めてくれるかですね。
私の男勝りの悪評は、もう社交界に周知されていますから、当然王太子にも届いているはずです。
私に婚約破棄を言い渡すには、ちょうどよい理由になるでしょう。
そこにさらに不義を付け加えられたら、確実に私との婚約は破棄できます。
五回の前世でも不義を捏造されました。
しかしそんな事をしなくても、私が魔境やダンジョンで死ねばすむことです。
事故に見せかけて殺そうとするかもしれません。
そう考えれば、王太子に言えば簡単に許可がもらえそうですね。
いっそ顔に大きなに醜い傷ができたと嘘をつこうかしら?
そうすれば不義を捏造されなくてもすみますもの。
「分かりました。
至急王太子殿下に許可を求めましょう」
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