第18話
「アンゲリカ。
私はどうすればいいのですか?
分からなくなってしまいました……」
私は、自分がもっと強いと思っていました。
表面的な力だけでなく、心も強いと思っていました。
だからこそ、今日まで生き延びてきました。
貴族令嬢とは思えない行動力だと、今でも自負があります。
ありますが、アンゲリカのようにはいきません。
私は、アンゲリカに寄りかかってしまっています。
「はっはっはっはっは!
なにを気にしているのです?
弱気になる必要など全くありませんよ。
団長が優しさを捨てれば簡単に全部片付くことです」
「私が?
優しさを捨てればすむ?
何のことですか?」
「分かりませんか?
団長が私に命じればいいのです。
ヘプバーン王国のレンブラン王とグレイスを殺せと。
そう命令してくだされば、明日にでも二人の首をお持ちしますよ」
「そんな簡単に言いますが、相手は一国の王と愛妾ですよ!
いえ、今ではグレイスが王妃同然だと聞いています。
防御力が厳重な王城を襲い、数々の魔道具を突破しなければいけないのです。
人間相手なら無敵のアンゲリカでも、絶対とは言えないのではありませんか?」
「そうですね。
確かに絶対とは言えませんね。
でもどれほどの魔道具があろうと、城が厳重であろうと、腕龍ほど堅固でも強力でもありませんよ。
九割五分は無事に帰ってこれます」
「ダメです!
絶対にダメです!
五分も危険があるではないですか!
そんな危険なこと、アンゲリカにやらせられません!
他に方法はないのですか?」
狼狽してしまいました。
アンゲリカが王やグレイスの罠にはまって死ぬかもしれない。
そう思ったら何も考えられなくなってしまいました。
どれほど少ない可能性でも、認められないです。
アンゲリカが苦笑いしています。
でも、そのなかに、私への情愛を感じるのは、私の願望なのでしょうか?
「まいりましたね。
どんな場合でも、五分くらいの危険はあるのですよ。
他の方法といわれても、後は迎撃か撤退しかありません。
この国で踏ん張って、刺客を撃退し続けるのです。
ですがその場合は、今日のように味方が裏切ることもあり得ます。
副団長としては元凶を取り除きたいのですが……」
「ダメです!
今はまだダメです!
もう少し私が強くなるまで待ちなさい。
アンゲリカが王とグレイスを殺しに私にそばを離れた時が危険ではありませんか!
だからまだダメです。
もっと私を鍛えなさい。
一瞬でも私の側を離れてはいけません!
これは厳命です!
いいですね!」
「しかたありませんね。
ですが、今までより訓練が厳しくなりますよ?
それでもいいですか?」
「構いません。
望むところです!」
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