第12話
「急げ!
急いで移動するぞ!
何をグズグズしている!
さっさと馬車の準備をしないか!」
ヘンリー王太子は恐れおののいていた。
王都に常駐している騎士や兵士の大半を投入したのにもかかわらず、たった三人を捕らえることができないばかりか、返り討ちになって皆殺しにされたのだ。
王宮でフィオナ嬢に殺されかけたことを思い出し、その場で失禁脱糞したくらい恐怖に囚われていた。
使い物にならなくなった右腕では馬に乗って逃げることもできない。
いや、元々惰弱な王太子は、乗馬の訓練もしたことがないのだが。
だから急いで馬車を用意させようとしたのだが、夜に長年の側近がほぼ皆殺しになり、急いで新たな側近を登用し、騎士や兵士を大量動員してフィオナ嬢を捕らえに行かせ、起きたらフィオナ嬢は牢に叩き込まれているか殺されているかを期待していたのだ。
それが寝入りばなを叩き起こされ、騎士と兵士が全滅させられたと聞いたのだから、周章狼狽して当然なのだ。
それは王太子ばかりでなく、新しい側近も王宮に仕える使用人達も同じだった。
馬車を用意しようにも馬丁がどこにいるかわからず、馬車と馬をつなぐ馬具の保管されている場所もわからない。
「さて王太子殿下。
フィオナ様に恥をかかせてくださった御礼、お返しさせていただきます」
「まて、待てば分かる!」
コリアンは王太子の話など聞いていなかった。
この場で即死させるつもりで爪をふるかけたが、王宮で飼われている猫の姿を眼の端に捕らえた。
「ミャァァァァン!」
コリアンは大きな血管を傷つけにように気を付けながら、王太子の四肢の腱を断ち切り、猫達に王太子を食べるように命じた。
床を這いまわることしかできなくなった王太子は、飼い猫に徐々に齧られ、ブラシのような舌で肉をこそがれ、長い長い激痛を感じながら喰い殺された。
一方ミリオナは、ほかの王族を殺して回っていた。
王太子を野放しにしていた王族を許すことなどでいなかった。
時間をかけて嬲る殺しにする余裕がないので、王族の住む王宮の最奥に素早く侵入し、鋭い爪で次々と輪切りにしていった。
国王も王妃も王子王女も、情け容赦なく皆殺しにされた
その頃フィオナ嬢は、風上にある王城城壁に待機させられていたのだが、金銀財宝でキラキラに光り輝く馬車に目が行ってしまった。
月明かりに輝く馬車があまりに美しく、城壁の上でじっとしていられなくなった。
ピョンピョンと城壁や屋根を飛んで移動するフィオナ嬢は、直ぐに馬車の屋根に取り付いてしまった。
「何者!」
鍛え上げていたのが災いしてしまった。
それぞれが超一流の戦士だった。
馬丁、馬丁の横にいる護衛、馬車の後ろを護る二人の護衛、馬車の中にいて女主人を護る戦闘侍女、そして何より女主人自身が鍛え抜いた戦士だった。
それぞれが必殺の一撃をフィオナ嬢に放ったが、全てかわされ、反撃の爪を受けて切り裂かれた。
マネー家のウルスラは予期しない死を迎えたが、これでフィオナ嬢を陥れようとした者は死に絶えることになった。
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