第11話
「フィオナ様。
王都は少々騒がしいので、領地に御戻りいただきます」
「えぇぇぇぇ、面倒だよ。
ここでゴロゴロしていたいよ」
コリアンがやんわりと王都から領地に逃げることを進めるが、めんどくさがりのフィオナ嬢は領地まで戻るのを嫌がった。
「正直に申しますが、王太子がフィオナ様を殺そうとしております。
どのような卑怯な手を使ってくるかわかりません。
伯爵と奥方様のおられる領地に戻られることをお勧めします」
今度はミリオナが説得を試みた。
「別にコリアンとミリオナがいてくれれば大丈夫でしょ。
さっきも騎士や兵士を皆殺しにしてくれたじゃない。
まだ子供の私にも勝てない連中だよ。
私がここに寝ている間に、コリアンとミリオナが全部片づけてくれるでしょ?」
「向こうが正々堂々と戦うのなら負けることはありません。
ですが魔法や薬物を使ってくれば話は別です。
私達がいないときにフィオナ様が襲ってくるのが心配なのです」
ミリオナの心からの説得に、だらしなく寝転んで話をしていたフィオナ嬢も起き上がって真剣に話しだした。
「一人が残って一人が行くのは危険なのよね?」
「はい。
私やミリオナは魔法や薬物にある程度の耐性はありますが、完全ではないのです。
一人で魔法や薬物の攻撃を受けたら、不覚を取るかもしれません。
二人一組で戦わなければいけません」
今度はコリアンがフィオナ嬢を説得しだした。
「じゃあさぁあ。
三人で王宮に行こうよ。
私だって幼いとは言っても領地を出ていいといわれたんだよ。
それなりに動くことくらいできるよ。
剣から逃げることもできるし、魔法や薬で苦しむ二人のために、時間稼ぎの攪乱くらいできるよ」
コリアンとミリオナは困って顔を見合わせた。
二人ともフィオナ嬢が生まれた時からの侍女だ。
フィオナ嬢の性格は嫌というほど知っている。
どれほど厳しく話しても、優しく説得しても、嘘の涙で泣き落としをしようと、こちらの思い通りに動いてはくれない。
説得は無理だとアイコンタクトで確認した。
そしてコリアンが諦めて話しだした。
「分かりました。
一緒に王宮に行きましょう。
ですがフィオナ様は戦わないでください。
敵に近づくのも駄目です。
私たち三人が同時に動けなくなるわけにはいかないので、フィオナ様は常に風上にいて、敵の薬物攻撃を受けないようにしてください」
「分かっているわよ、任せてよ」
コリアンとミリオナは顔を見合わせてため息をついた。
この返事では全く守る気がない。
いや、そもそもフィオナ嬢は、その時に興味があることを最優先するのだ。
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