第77話

「クレア、ノエミ、ミレナ。

 ベンの事を頼みましたよ」


「「「はい、お任せください」」」


「もちろんレオもこれまで通り頼みますね」


「わん!」


 カチュアは、股肱之臣とも言えるクレア、ノエミ、ミレナの人族戦闘侍女三人に、皇帝アレサンドから許可を受けた魔道具を与えた。

 

 だがこの魔道具を開発するのが大変だった。

 莫大な、大陸の戦力バランスを崩しかねないほどの魔力を秘めた魔晶石。

 制限なしに後宮から出す事などできない戦略戦術兵器だ。

 そこで政宮の側近忠臣重臣が慌てて制限を加えようとした。

 具体的には、攻撃や回復に使えないようにする事だ。

 実際に考え魔法陣を刻み込むもは魔術師なのだが。


 古文書から相応しい魔術陣を探し出し、既存の知られている魔法陣と組み合わせ、他に魔力が使えないようにした。

 魔術攻撃から身を守るための防御魔法しか使えない魔道具に加工していた。

 もう一つの魔道具は、敵対する者の魔力を中和するものだった。

 カチュアの魔晶石を使った魔力中和魔道具は、ありとあらゆる魔術を中和する。


 当然だが、同じモノを皇帝アレサンドも肌身離さず身につけている。

 身体能力を優先する、というか、魔力に恵まれない虎獣人族では、魔道具は身近なものではなく、蔑ろにされる事も多い。

 だが大公の地位を得ていたアレサンドは、好んではいなかったが、魔道具を身につけるていた。


 王、大王、皇帝と地位が上がる従って、暗殺謀殺の危険が高くなり、好みなど関係なく魔道具を身につけるようになっていた。

 側近忠臣重臣の中には、いや、あの当時の重臣の中には、アレサンドに魔道具をつけさせないように誘導して、暗殺謀殺を企むような野心家もいたのだ。

 そんな奸臣に乗せられるようなアレサンドではなかったが、そのような状況下で、虎獣人族は誇りにかけて魔道具を身につけないという愚かな情報が流れ、アレサンドが魔道具を否定していると言った、嘘の情報が皇国内に流れたりしていた。


 だが今のアレサンドは、嬉々として魔道具を身につけている。

 何といっても、心から愛するつがい、カチュアお手製の魔道具である。

 敵対する者に悟られないように、衣服の下に肌身離さずつけている。

 一つ二つではなく、付けられるだけ魔道具をつけようとする。

 隠している分があるから、一つ二つ三つは見せる場所に身につけてもいいだろうと、周りの者に見せびらかすように、カチュアお手製の魔道具を身につけていた。


 だが、レオと三人の戦闘侍女には制限がかけられていた。

 強力な兵器になるカチュアの魔晶石を使った魔道具は、それぞれ二つしか貸し与えられなかった。

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