第45話
「アレサンランド連合皇国皇帝、セントウィン大王国大王、ウィントン大公国大公、サヴィル王国王配、マクリンナット公爵家公配、アレサンド陛下のご入場!
アレサンランド連合皇国皇妃、セントウィン大王国大王妃、サヴィル王国女王、ウィントン大公国大公妃、マクリンナット公爵家公主、カチュア陛下のご入場。
アレサンランド連合皇国皇子、セントウィン大王国大王子、マクリンナット王国国王、サヴィル王国王子、ウィントン大公国大公子、マクリンナット公爵家公子、ベン陛下のご入場」
前代未聞の入場だった。
皇帝アレサンドとカチュア皇妃が手を繋ぎ、カチュア皇妃が片手でベン皇子を抱き、壇上に入ってきたのだ。
皇帝と皇妃が一緒に入場するなどありえない。
まして手を繋いで家臣の前に出るなど、史上初めての事だった。
カチュアを警戒する虎獣人族に対する強烈な脅しだった。
絶対にカチュアを護り愛するという宣言だった。
皇帝アレサンドがベン皇子を抱いていない事が、皇太子にはしないというサインと考える事もできたが、カチュアを護るために武器を持つ利き手を空けているだけかもしれない。
常在戦場の武闘派皇帝アレサンドならば、ベン皇子の皇太子云々ではなく、カチュアを護るために利き手を空けているのだと、アレサンドに睨まれた者達には理解できたし、心から恐怖した。
自分達が最後の一線を超えてしまったことを悟った。
カチュアがサヴィル王国の女王に就任するのに反対したことが、粛清を決定づけたのだと悟った。
今直ぐ壇上に駆け上ってアレサンドを弑逆しなければ、生き延びられないと悟り、儀礼用の刃引きの剣でも戦うべきだとは理解した。
だが、全く動けなかった。
今なら、同じように窮地に立っている、傍系王族や譜代功臣家の者達が、同時に襲いかかってくれると、頭では分かっていた。
だが、アレサンドの氷のように凍てついた殺意の視線が、自分達が束になって襲いかかっても、返り討ちになるだけだと悟らせていた。
虎獣人族の本能が、絶対に勝てない相手だと訴えかけていた。
今直ぐ尻尾を巻いて遠くに逃げろと、激しく訴えかけていた。
だが、立ちすくんでいる間に、少し冷静になり状況が分かるようになった。
アレサンドの側近忠臣が、恐ろしい眼つきで睨みつけている。
逃げるための出入り口にも、近衛戦士団が厳重な警戒をしている。
襲う事も逃げる事もできないと悟って、死ぬにしても名を残そうと考えた。
反逆者の汚名を残すことになり、家を滅ぼすことになるが、それでもむざむざ捕えられ処刑されるよりはいい。
孤高の虎の本性が勝てないと分かっている叛逆を決断させた。
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