第14話
「カチュア様。
今のは殿下がカチュア様を愛するあまり暴走されたのです。
愛するあまりの事なのです。
絶対にその犬もカチュア様も傷つけさせません。
私が必ず護ります。
ですから殿下を許してあげてください」
マリアムが必死でとりなし、アレサンド大公を庇うが、怒り狂ったカチュアと、カチュアを護ろうとする子犬に近づくこともできないでいた。
カチュアのために常時側にいる女性侍医が、マリアムにアドバイスした。
「マリアム様。
今回の件は殿下の大きな失敗でしたが、結果はいい方に向きました。
全く無反応だったカチュア様が、命懸けで子犬を護ろうとしました。
これは心が戻った証拠です。
後は信頼を取り戻すだけです。
とても難しい事かもしれませんが……」
マリアムは直ぐに侍医の話をアレサンド大公に伝える使者を送った。
大公が焦って暴挙に出ないように、逐一報告しようとしていた。
特に今回はよい報告なので、内容をそのまま報告できた。
悪い内容だと、大公が暴走しないように文面を考える必要があった。
「カチュア様
お怒りも警戒も当然の事ではございますが、まず何かお食べください。
食べたら直ぐに眠られて下さい。
顔色が悪すぎます。
直ぐにカチュア様のお食事と犬の餌を持って来なさい」
マリアムはカチュアの身体が心配だった。
カチュアが子犬のために魔法を使ったのは明らかだった。
しかもとてつもなく強力な魔法だった。
だがカチュアの報告書には、魔法が使えるという内容は全くない。
生まれてから一度も使ってこなかった魔法、それも伝説級の魔法を使ったのだ。
マリアムが反動を恐れるのは当然だった。
「ウウウウウウ!
ワン!
ワン、ワン、ワン、ワン!
ウウウウウウ!」
「ああああああ!
ああああああああ!」
急いで食事と餌を持ってきた侍女が固まった。
子犬はカチュアを護ろうと、小さな体にもかかわらず、精一杯敵意をむき出しにして威嚇している。
カチュアはそんな子犬を護ろうと、身体全体を使って庇い、舌がなく満足に話せないにもかかわらず、訴えてくる。
その魂の訴えが、普通に戦えば簡単にカチュアと子犬を引き裂いて殺せる、虎獣人族の侍女を固まらせたのだ。
どうしていいか分からなくなった侍女は、無意識にマリアムをみた。
これからどうすればいいか指示して欲しいと、本能的に思ったのだ。
「食事と餌はその場に置きなさい。
私達はしばらくこの場を離れましょう。
カチュア様が安心して過ごせるようにするのです」
本当はその場で見守りたかったが、それではカチュアが食べる事も休むこともできないと、マリアムは考えたのだ。
それにこの部屋なら、護衛を隠すための隠し部屋があった。
そこからならカチュアを見守る事ができたので、思い切った方法が使えた。
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