第3話

 わたくしの驚きと戸惑いを置き去りにして、決闘の話はトントン拍子にすすみ、多くの貴族士族が協力してくれました。

 ドミニクに娘を傷物にされた貴族家はもちろん、大金鉱山を発見したコータウン伯爵家を妬んでいる貴族家も多かったのです。

 なによりも問題だったのは、ドミニクの行状を王家が嫌っていたのです。


「コータウン伯爵家令息ドミニク。

 貴君の度重なる令嬢に対する行状と婚約解消は、貴族の態度として許し難い。

 だが法に抵触していたわけではないので、今までは見逃していた。

 だがこの度のサヴィル子爵家令嬢ジュリアに対しての婚約解消には、サヴィル子爵家令息アーロンが名誉棄損で決闘を申し出てきた。

 王家はこの申し出を認め、決闘を許可することにした。

 ドミニクは正々堂々アーロンと決闘するように」


「お待ちください王太子殿下!

 どうか、どうかお待ちください王太子殿下!

 度重なるドミニクの行状、お詫びのしようもございません。

 全てドミニクに非があります。

 ドミニクは廃嫡して修道院に送ります。

 どうか、どうか、どうかそれでお許しください。

 伏して、伏してお願い申し上げます」


 コータウン伯爵はなりふり構わず頭を下げています。

 ドミニクを助けたくて必死なのです。

 ですが、もう手遅れのようです。

 この決闘は王太子殿下の独断ではないのです。

 国王陛下の内意を受けた勅命ともいえるモノなのです。


 ドミニクも恐れおののいています。

 真っ青になってガタガタと震えています。

 あ、崩れ落ちました。

 足に力が入らず、倒れ込んでしまいました。

 ああ、ああ、ああ。

 白目を剥いて泡まで吹いています。

 卒倒してしまったようです。


「殿下!

 お許し下さい殿下!

 国王陛下におとりなしください、殿下!

 ダメなのですか?

 許していただけないのですか?

 ならば、ならば言わせていただきます。

 ドミニクは確かに令嬢方を傷つけましたが、国法には触れておりません。

 賠償金も規定通り支払っております。

 なのにこの裁きは酷過ぎます。

 ドミニクがどうしても決闘しなければいけないのなら、相手はジュリア嬢になるはずです。

 代闘人としてアーロン殿が戦うと言われるのなら、ドミニクも代闘人を立てていいはずではありませんか!

 これではあまりにも不公平でございますぞ、王太子殿下!」


「心配するなコータウン伯爵。

 私は公明正大であることを大切にしている。

 当事者であるドミニクに戦えと言っているのだ、当然ジュリア嬢も戦う。

 アーロンが代闘人として戦うのだ。

 ドミニクにも代闘人を認めるさ。

 今回も金にモノをい言わせて代闘人を探すのだな!」


 王太子殿下は、よほどドミニクに腹が立っていたのでしょう。

 吐き捨てるようにコータウン伯爵に言葉を叩きつけられました。

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