第5話
「なぁ?!
この田舎娘が猪口才な!」
王太子が怒声をあげて右手を振り上げた。
横に立っていたサリバンノアが、幼いフィオナ嬢が殴り飛ばされる情景を想像して、愉悦に満ちた表情を浮かべる。
チラリと舌をだし、妖艶に自分の唇を舐める。
どう動けば、どういう表情を浮かべれば、男を虜にできるかを知り尽した、ベテラン高級娼婦のような所作だった。
母親のウルスラから痛みと共にたたき込まれた妖艶な動きで、王太子を虜にする。
幼いフィオナ嬢を襤褸屑のようになるまで殴り、その興奮のまま王太子と愛欲の限りを尽くす。
なんなら襤褸屑のようになったフィオナ嬢にむりやり見せつけてもいい。
サリバンノアはそう考えていたのだが……
フィオナ嬢を殴り倒そうとした王太子の右腕を、フィオナ嬢は易々と交わした。
交わしただけではなく、軽く右手で王太子の右腕を払った。
払っただけのはずなのに、王太子の右腕は無残な状態になっていた。
王太子の右腕はザックリと裂け、心臓の鼓動に合わせて血が噴き出ていた。
甲側の前腕の皮は全く残らず、二つに裂けた骨肉となっていた。
前腕の橈骨と尺骨の間で二つに分かれていたのだ。
手首から先も力任せに引き千切られていたが、フィオナ嬢が払わなかった掌側の皮が残っているので、皮でつながってプラプラと揺れていた。
「ウギャァァァァ!」
数秒後にようやく痛みを感じたのだろう。
王太子が激痛に床の上をのたうち回った。
傷口から噴き出す血飛沫で辺り一面が真っ赤になった。
サリバンノアの顔もドレスも王太子の血に汚れたが、サリバンノアは妖艶な表情を浮かべて美味しそうにその血を舐めてみせた。
サリバンノアのドレスは、最初から血で汚れてもいいように赤かった。
フィオナ嬢の流す血で汚れると予想していたからだ。
王太子の歪んだ欲望をよく理解しているサリバンノアは、白いドレスと迷ったのだが、今回は赤を選んだ。
白いドレスを汚すのは、フィオナ嬢を少しづついたぶり、破瓜の血で純白のドレスを汚し、そのドレスを着たまま交わる時が一番王太子に愉悦を与えられると考えたからだ。
だが今回はことごとく想定外となった。
フィオナ嬢を捕まえる事すらできず、逆に王太子が血の海に沈んでいる。
それもサリバンノアには面白く感じられたが、母親に与えられた役目を果たさなければ、また地獄のような調教を受ける事になる。
それは嫌だと考えながら元凶であるフィオナ嬢に眼をやれば、その右手には長く鋭い爪が伸びていて、その爪の間には王太子のであろう生皮が長くこびりついていた。
一瞬見間違えかと二度見したサリバンノアだったが、間違いはなかった。
それどころか、フィオナ嬢は純真無垢な表情のまま、自分の右手についた王太子の血をペロリと舐めた。
そして視線があったサリバンノアにニッコリと微笑んだのだ!
サリバンノアは母親と相対した時のような恐怖を感じて失禁してしまった!
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