第113話 格闘馬鹿といろいろ馬鹿

 その日俺は、自室でふて寝していた。


 おっさんに教会を襲わせて……

 うまくいかなかった。


 どうしてか、この頃は何1つうまくいかない‼️


 拠点にしている宿屋の部屋は、日本で言えばスイートルームなのだろう。

 いくつかの部屋に分かれている。


 いわゆる寝室も2つあって、大きめのベッドが2つ入ったメインのものと、ベッド1つのサブのもの。


 メインの部屋で人質達を監禁しているので、九八とおっさんはここにいる。

 

 俺は1人、サブの部屋で考えるのだ。


 俺は、勇者が活躍する、元の世界に戻したい。

 

 結界なんて要らない。

 アルスハイドには俺達がいるじゃないか⁉️


 村が魔物に襲われる。

 犠牲者とかは出るかもだけど、それは魔物がしたことだから仕方がない。

 俺達が助けに行く。

 助ける。

 感謝される。


 最高の世界じゃないか。


 俺がしようとしていることは、

 『元に戻す』だけだから、何の問題も無い筈だ。


 でも、うまくいかない。


 1の手下である、九八まで離れかけている。


 なんで?


 俺はどこで間違った?


 アルスハイドは、魔物被害を甘受している。


 甘受?


 使い方、あってる?


 まあ、仕方がないと諦めているが、それでもせめてもの抵抗で、被害を減らそうと勇者召喚をした。


 だから、まさか結界まで作ってしまったのは計算外だ。


 それを壊す。


 うん、間違っていない。

 あるべき姿に戻すだけだ。


 ただ、俺達だけでは勝てないからさ。


 人質をとって仲間を増やした。


 これは日本でも、やったことがある。


 4、5人のグループと揉めた時だ。


 多勢に無勢は嫌だから、他者とつるまない有望な後輩の彼女をさらって、それで脅して手下にした。


 この場合、人質は玩具にするべきだ。


 が、俺は未遂だ。


 俺は本当に力が弱い。

 

 押さえ込もうとして反撃されて、あそこを蹴られて悶絶した。


 哀れまれたか、人質役はやってくれたがずっと微妙な空気だったよ。


 俺は本当はスゴいのに‼️


 誰もわかってくれない俺のスゴさを、ただ1人認めてくれた、九八まで離れようとしている。


 それだけは嫌だと思う。


 俺はまた、無価値になるのか?


 嫌だ。

 絶対嫌だ。


 なら、どうする?

 おっさんを使って、どうすれば抵抗勢力を排除できる?


 いや、人数的に無理だ。

 なら、もっと……


 その時思い付いたのは、以前襲おうとした貴族街にある孤児院だ。


 結界を守る勇者グループが関わっている。


 「そうだ‼️」


 あそこからまた、何人か拐おう。


 あいつらは勇者じゃない、一般人だ。


 拐えるはずだし、それをネタに脅せばいい。


 結界を解除しろって。


 スゴくいいことを思い付いた、その時!


 「⁉️」


 頭上から声が聞こえた。


 「あー、ここ、ここ。」

 「ここなの、いちご?」

 「そう。

 こっちが1つで、こっちは2つ。

 多分1つの方が……」


 俺達の部屋は3階で最上階。

 上に人がいるなんて?

 あり得ない。


 ドン‼️と大きな音がして、天井の一部が弾け飛んだ。


 「こんばんは。」


 一瞬で侵入した?

 目の前に女がいる。


 夜目にも光る金髪で、舌なめずりするような表情に……


 ゾッとした。

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