第12話 勇者30号の王宮探訪①

 「まあ、出産で29号も疲れているし、そうだな、今日明日は休養にして、詳しい話は明後日でいい?」


 そう言って、千夏は帰っていった。


 そう言えば、千夏ってどこに住んでいるんだ?


 疑問に思ったから、まだ廊下で転がっていた饅頭に聞いてみる。


 「なあ、饅頭。」

 「……う、……何?」

 「千夏ってどこに帰るの?」

 「千夏ちゃんなら、城下に家を持ってるよ。」


 歴代の召喚勇者で、城に残っているのは妊婦だった29号と、今日召喚されたばかりの私だけ、か?

 皆独立しているようだ。


 「そっか。近い内に行ってみるか、外。」

 

 現状を知るのは大切だ。


 「それよりも、ヒールかけて。」

 「あほか、饅頭。私はオークの魔石のお陰で『勇者マイナス』なんだよ。回復魔法なんて無いよ。」


 千夏の『ピール』のせいで疼痛に悩まされる、饅頭王は放置した。


 私は29号の隣の客間を借りた。

 号数呼びが定着する前に、名前を聞かないと、な。


 あと、千夏に、

 「コスプレナース。時々少女の様子見といてね」と、言われた。

 失礼なロリババアだ。


 部屋を覗くと、29号はちび息子とぐっすり寝てた。

 

 ならよし。


 隣の部屋に……取り敢えずの自室に入ると、

 「お‼来てる‼」

 頼んでおいた着替えが来ていた。


 ナース服がデフォだと嫌すぎる。


 下着まで含め何セットか用意してもらった。

 豪華なものじゃなく、普通の、町の人と同程度のもの。


 ここで感じたのは、さすが、10年前から召喚勇者のいる国‼


 伸びる素材など化学繊維的なものは無理でも、普通に肌触りの良い綿シャツにズボン(スカートは私が拒否した)。

 ブレザーだったり、ベストだったり、上着付き。


 うん、異世界名物、センス皆無、ゴワゴワの服は無し。

 平民は古着しか着れない‼

 も、多分無しだろう。


 王宮で頼んだから実際のところは不明だが、頼んだらすぐ出てきたあたり、当たり前にそれなりの量が流通していると想像できる。


 あと、下着。

 さすが、10年前から召喚勇者のいる国‼(2回目)


 ゴムはあるのか、ちゃんと普通にパンツだったし、ブラジャー、ちゃんとカップがついてた。

 ワイヤーとかは無かったが、これは助かる。

 

 ただあてずっぽうで、おおむね正確なサイズを出されたのはムカつく。

 私は需要が1番薄い、貧乳枠でも巨乳枠でも無い、Bカップだ。


 まあ、この国の平均サイズかもしれない。そう思おう。


 やっとナース服を脱げた。

 

 勇者マイナスだが、魔力はある。


 魔力を流して使うシャワーを使用、上から下まですっかり着替えると、もう夕方近かった。


 夕食は部屋に運ぶか、王宮内で働く人用の食堂に来るか聞かれ、迷わず『食堂』を選んだ。


 勝手に召喚したんだから当然とは言え、飯の世話もしてくれるらしい。

 あと、城の中もウロつきたい。


 ただ、多くの召喚勇者が黒髪黒目(←日本人限定?)なのに対し、4分の3外国人、金髪の私の見た目のお陰で、異世界テンプレが発動した。


 ああ、この国の人は、私たちの感覚上西洋人の見た目です。


 「娘‼どこから入り込んだ‼」

 怒り顔で駆けつけてくる屈強な騎士が1名。


 ……


 ラッキー‼


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