第11話 医療従事者系勇者が2人もいる国って、スゴくない⤴️

 「ごめん、入るよ」と、扉が開いた。


 1ヶ月前に召喚されて、うちは、ほとんどこの部屋から出なかった。


 召喚時、9ヶ月で臨月間近。

 腹が重くて行動的にはなれないし、いきなり妊婦が召喚されて、アルスハイドの人も驚いたようだ。


 以来陽当たりの良い、トイレも風呂もついているこの部屋を与えられて、引きこもっていた。


 ご飯はメイドさんが持ってきてくれるしね。


 ただ、体重管理はしとかないと後が怖いから、余り太り過ぎないようにしつつ、軽い運動などして過ごし、今に至る。


 「うわっ、若⁉️」

 うちを見た途端に言ったのは、小学生にしか見えない、可愛い系の子。

 

 え?

 あなたの方が若いよ。

 

 いや、でも、発言から推察すると……


 は?年上なの⁉️

 『子』じゃいけない⁉️


 パニックしていると、もう1人がためらいなく近付いて来る。


 はい⁉️ナース服⁉️

 

 金髪ヤンキー系のナースも若く見えた。

 20代前半かな?


 キレイ系の彼女に陣痛の合間をぬって、

 「誰?」と訊いた。


 「ああ。

 私は大崎いちご。あなたの後に召喚された勇者30号ね。

 ナース服なのは、大学の卒業式だったから。実習以外の実務経験無しの、ペーパーナースね。」


 ……

 濃いな、自己紹介が。


 ナースは、隣の小柄な子を指して続ける。


 「で、こいつが初代勇者だ。幸田千夏。

 医師免持ちだけど、元々研究医だかで、完全ペーパードクターらしい。」


 ……

 濃いよ‼️他己紹介も‼️


 へ?

 お医者さん?

 で、初代勇者って、いったい何歳なん……


 「うっ、……ぐっ……」

 考えかけて、また一気に強まる陣痛に、息が止まりそうになる。


 「間隔、ほとんど無いか」と、医師免許を持つ方が言い、

 「取り敢えず、息は止めないように意識して。赤ちゃん、酸欠になるよ」と、ヤンキーナースが意外にも優しい声を出す。


 「ねぇ、ねぇ。生まれるの?」


 瞬間3人目の声がして、驚く。

 

 2人の間にひょっこり顔を出したのは?


 王様?


 召喚された時に見た、この国の王様だ。

 もちろん、男性……


 「いや、」


 拒絶の言葉が終わる前に、ドーン‼️と言う衝撃音。

 王様が、視界から物理的に飛び出していく。


 陣痛がきつ過ぎて目では追えなかったが、どうやら彼は蹴り出されたらしい。

 初代勇者に。

 ドカン‼️と直後に聞こえた音は、壁に叩きつけられたようだ。


 「ピール。」

 ぴーる?


 「おい、衛兵。」

 「あ、はい。」

 「今大福に、中途半端なヒールをかけた。痛みは残したから、苦しくて動けないよ。」

 「は、はい。(ガクブル)」

 「次、大福が入り込んだら、今度は治してもやらない。あんたも連帯責任だからね。」

 「は、はいーっ‼️」


 慌てて走り去ろうとする兵士に、彼女はお湯やタオルなど、必要な物をメイドに持ってこさせるよう、頼んでくれた。


 あはは。

 なんだ、これ?


 1人で生むつもりだった。

 勝斗にも逃げられたし、1人で。


 更に異世界召喚されて、文化レベルがうちらの世界より低そうで、本当に文字通り1人で生むしかない、と思っていたのに。


 「だいぶ降りてきた‼️」

 「後ちょっと‼️」


 ペーパードクターとペーパーナース。

 頼りにならなそうな肩書きの、頼りになる人が押し掛けてきた。


 「オギャア‼️」


 産声が聞こえる……


 「男の子だ。」

 「……ねぇ、いちご。」

 「ん?」

 「へその緒、聖剣で切っていいと思う?」

 「……どこから出したし?」

 「アイテムボックス。」

 「……別のにしろし。」

 


 

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