第77話 勇者連絡網が更新されました

 「え?何、これ?」

 

 小さな箱に緑と赤のボタンと、電卓と同じ数字のボタン。


 予感はあるけど……

 え?まさか?


 「スマートじゃないホンだね。」

 「普通に携帯電話って言えし。」


 突っ込んだのはいちごさん。

 千夏さんがアイテムボックスから出したのは、真面目に携帯電話だった。


 「あんた達が引退後の勇者……18号の山田朔夜君が作ったんだ。勇者番号でやり取りできるから。」


 俺達夫婦に電話を渡した千夏さんが伝えたのは、なかなか衝撃の内容だった。


 「国に結界が張られ勇者が必要なくなった今、わたし達は『帰る』方法を探している。」

 「え?」

 「真面目に⁉️」


 返還の魔道具は、今素材集め中だし、大きな装置のため時間は掛かるが……


 理論的には必ず出来るそうだ。


 「だから、半年後か、1年以上後かも知れない。出来たらそれに連絡入れるから、あんた達も帰るのか、考えておいて。

 あと、悔いが残らないように、地図作り、頑張って。」


 さすが千夏さん。

 オタク心を分かってる。


 帰れるかも知れない目が出てきても、1度始めたことは投げ出したくない俺達です(^∇^)


 返還には、まだまだ問題が多いらしい。


 魔力は等価交換。

 返還は、日本側からの『思い』を使うのが定番らしいが、召還された時期が古いほど難しくなる。

 これでは困る‼️


 今千夏さん達は、

 「代替えを探している」と、言っていた。


 「だから、何か思い付いたら即連絡が欲しい。あと、もし15号勇者と16号勇者なんだけど……」


 彼らは、結界が張られ安全が確保された今、唯一の懸念材料だそうだ。


 引退後の召還勇者だから直接の面識は無いが、まあ、噂は届いている。


 いわゆる、ヤンキー勇者。


 彼らは平和になった世界を嫌っていて、もう1度活躍するために、結界を攻撃してくる可能性が高いそうだ。


 「それは……」

 「ちょっと許せないな……」


 万が一そんなことをされれば、それは例え成り行きだったとしても、俺達がこの世界のためにしてきたことを否定する。


 「まあ、そこまで馬鹿じゃないと思いたいけど、奴等を見かけたら連絡を」と、千夏さんが閉めた。


 「で?あんた達の首尾は?」

 「未踏があと2ヵ所だね。」

 「1つは北?」

 「そうそう。」


 国の北側は、ドラゴンの生息地。

 しかも山岳地帯だから。


 この地図作りは、結界が無い頃から始まっている。


 後回しで大正解だった。


 「ここの測量って言うと、『劔岳 点の記』になるし。」

 「はい?」

 「ああ、全部歩かなきゃならないってこと。」

 「ああ。」

 「だから今からが夏山だし、歩き回る予定。」


 「ああ、なら袋ラーメン、山飯に最適じゃんか。無駄にしないで良かった。」

 「いや、にしても出し過ぎだから。」

 「いいじゃんか、足りないよりは‼️」


 うちの嫁といちごさん、妙に気が合うらしいな。


 「なら、あと1つって?」

 「ああ、ならさ。」


 香澄が提案する。


 「2人にも手伝って貰わない⁉️」




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