帰るまでが遠足ですか?……出だし土下座から始まる異世界迷走……

@ju-n-ko

1章 なかなか王宮から出ていかない人々

第1話 出だし土下座

 「ずーびーばーぜん、でじだぁ‼」

 気が付いたら、目の前に饅頭がいた。


 いや……

 饅頭みたいな人。

 よく肥えてるよ、この人。

 表面が赤く、ツルンとしていた。


 少なくとも、1秒前までこの饅頭がいる世界ではなかった。


 いたはずの大学の講堂は、いかにも現代日本の建物という感じ、表面のツルリとした板を模した床材で、今足元にあるのは大理石だ。

 

 人間は、『秒』で居場所を移れません。


 少なくともここは日本ではないし、100歩譲って王様(饅頭)がいる他国だとしても、やっぱり『秒』では移れない。


 饅頭は、土下座していた。


 「もうじばけながったぁ‼」

 

 何言ってんだか分かんねぇよ。もっとはっきり言えし。


 饅頭の正体は中年男で、表面がツルッとしているのはマントの素材だ。

 

 どう言えばいいのか……

 ファンタジーなアニメの定番、布というより綿入れのような、

 『どてらか、貴様‼』と突っ込みたくなるような、厚手を超えたマントである。


 暑くないの?

 

 少なくとも私は暑くも寒くもないぞ、薄着だけれど。


 ああ、だからか。

 だからダラダラ汗かいてんだ。


 赤いどてら(意地でもマントとは言わない)の下は、無駄に襟の高い服で、短い首が苦しそうだ。


 ああ、そう言う矯正器具かと納得する。


 饅頭型中年男の頭には金の王冠が……


 うん、どう見ても『王様』だわ。


 王様はベッタリと大理石の床に座り、両手をついて、額を床にこすりつけながら喚く。

 「ごべんなざい‼」、と。


 王様に、出土下座で迎えられる異世界生活。


 いや、絶対これ、異世界でしょ。

 『秒』で風景が入れ替わった事といい、少なくとも尋常じゃない、それは分かった。


 ただ、

 『なんで今日この時だったんだ⁉️』と、苛立ちがつのる。


 ああ、気付かなかったけど、饅頭以外に騎士様っぽいのも見える。

 なんだ?

 どてらマントじゃない、風に揺れる黒いマント……と言うよりローブだな、あれは魔法使いだろうか?


 大理石の床、部屋の真ん中に巨大な構造物がある室内に、結構人がいることを認識した。


 「ゆるじでぐだざい‼」

 さっきからひたすら頭を下げるだけ、何も実のある説明をしない饅頭に、迷いなく歩み寄ったよ。


 「てめえ‼(腕を取る)」

 「うぇ‼」

 「さっさと‼(足を絡め後ろに倒れる)」

 「うわわっ。」

 「説明しろし‼」

 

 思い切り関節を極めてやった。

 「ぎゃぁぁぁっ‼ゆるじてぇ‼」

 「うるせえ‼饅頭‼」

 泣き叫んでタップしてきたが、完全無視で締め上げる。


 『出だし土下座→関節技』で始まる異世界生活、はじまりはじまり(←やけくそ)。






 夕方6時前後、毎日更新の予定です。


 あと、現代ファンタジーを朝6時前後に更新しています。

 『恐竜がパステルカラーで塗られていても、僕達に反論出来る根拠はない』

 出来ればこちらものぞいてください。

 

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