第134話 召喚勇者28号 伊勢崎華子

 私には、物心付いた頃から『許嫁』がいた。


 は?

 現代日本であり得ない?


 知らんよ。

 万に一つ、10万に一つならあるんじゃない?


 まあ一応、大企業のお嬢様だしね。


 私の父は一代で会社を大きくした。

 つまるところ成り上がりだが、無作為に歩いている人に企業名を言えば、8割がたは知っている、そんな会社の社長令嬢として生まれた。


 許嫁は同系の企業の……

 ただしこちらは、200年以上続く古い会社。

 そこの社長令息で、2歳年上だ。


 ……

 私達は知らなかった。


 実は、許嫁の方の会社は古いだけで、経営は火の車、彼の父親が学生時代の縁を頼りに、半ば強引にうちに婚約を申し込んだ。


 私の家は仕事もうまくいっていたし、要は縁を結ぶことで助力を求めようとした……

 のが、嘘偽り無い真実だ。


 私は……

 まあ、それもありかと思っていた。


 学校も別で、将来結婚するらしい青年にはほとんど会わないままだったが、彼は背が高くなかなか格好いい。

 いつか一緒になるのだと、信じていた。


 しかし、彼の方は違ったらしい。

 

 高校、大学と進む内に、

 『なんで、俺が?』と思い出した。


 彼の家は、取り返しのつかない失敗をしていた。


 古い歴史ある会社ゆえのプライドが、金目当ての婚約を認められない。

 

 いや、結婚して貰わないと困るのだが、決して正しく伝えない。

 歴史の無い伊勢崎家を救うために、

 『結婚してやるんだ』と伝えていた。


 許嫁は自由を求めた。


 俺が我慢するなど間違っている。

 大体会えない許嫁などと違い、大学に入って一人暮らしを始めてすぐに、ミス○○大の彼女も出来た。


 絶対に断ってやる。

 必ず破棄しようと思ったから、彼は新年のパーティーの、万座の席で、他人の目に承認させる形で、『婚約破棄』を声高に叫び……


 「華子‼️お前との婚約は破棄する‼️」


 ……

 今、思い切り『はなこ』とか言いましたね?


 ……

 『かこ』ですが?

 伊勢崎華子(いせさきかこ)。


 名前も知らない人間に婚約を破棄されたショックから、私は会場から逃げ出した。


 頭の中がメチャクチャで、視野狭窄の状態だった。


 私はそのまま、会場のビルの屋上から身を投げ……

 そのまま異世界に召喚された。


 『婚約破棄』の上、『異世界召喚』。


 なんつーコンボだよ‼️


 随分あとで分かったことだが……


 彼はその場で自分の父親に殴られ、自分の家の状態を初めて知り、慌てて私を探したものの行方不明。


 その後私の家に援助を切られ、一方的な婚約破棄の賠償と、今までの分の返還要求がなされ……


 彼の家は倒産。

 財産も全て賠償にとられ、大学も中退せざる得なくなるほど困窮するのだが……


 まあ、当時の私には知らないことだ。


 アルスハイドに来た私は考えた。


 これは、ある意味チャンスじゃないか⁉️


 『婚約破棄』と、『異世界召喚』とコンボしたんだ。


 こうなったら『聖女もの』もやってやる。


 いやもう、やけくそだね(笑)






 ははは( ´∀`)

 婚約破棄、初めて書きました。

 面白かったけど……

 似合わないと言うか、書きにくかったです。

 なんとかなってるといいのですが……

 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る