第124話 (不)名誉にも、オカルト雑誌の表紙を飾ったらしい

 昔から、『神隠し』と呼ばれる分野がある。


 人がある日突然消えるわけだが……


 「ム〇的な?」

 「うん、〇ー的な。」


 某オカルト雑誌で特集記事が組まれたそうだ。


 この令和の世だ。

 動画だって残っている。


 「卒業式だし、そりゃ、誰かしら撮ってたね。」

 「何本も出てたよ、いろんな角度から映像が。」

 「うわっ。」


 「そう言えば、平成っていつの間に終わったの?」

 「は?」

 「『令和〇年度××看護大学卒業式』って幕が出てた。」

 「ああ、天皇が譲位したんだよ。亡くなるのを待ってじゃなくて。」

 「へえ。時代は変わるねえ。」


 ……

 なんだ、この馬鹿会話。


 今更仕方がないということなのか、焦らないいちごと、マイペース過ぎるモフモフオタク。


 「って言うか、この手のことって『異世界補正』で誤魔化されるもんじゃないの⁉」


 なんだ、そりゃ?

 初めて聞いたぞ、異世界補正。


 本当、最近の子は異世界に理解があり過ぎて……


 「補正はないよ。いちごはたくさんの人の前で消え失せた。その認識で間違いない。」


 わたしは深夜、研究室に1人でいるところを召喚された。

 目撃者は無し。


 2号の北見陽太は……


 ずっと避けていたけれど、最近は彼を思い出すこととした。

 不幸にも亡くなってしまったが、彼がいたことは間違いない。


 陽太は専門学校の帰り道、しかも学園祭準備だかで遅くなって、終電でアパートの近くまで戻り、残りを歩く段階で召喚された。

 目撃者は無し……

 いや、万一見られていても、酔っ払いの戯言で済む時間帯だった。


 1人暮らしの自宅で、トイレに入ろうとした途端だった、終。


 部屋で夜眠っていて、そのまま召喚された力。


 ……


 こうして考えると、それなりに誤魔化すことが出来るタイミングで召喚されてるな、みんな。


 もう1人目撃者多数で召喚されたのは朔夜だが……


 同級生に暴力を受けていて、目撃者だらけ、しかし崖から落とされた瞬間の召喚だったから、『消えた』ことには気付かれにくい。


 なんでだろう?

 これまでは、いちごの言う『異世界補正』が効いている。


 最低限『騒ぎ』にはならない程度に召喚していたのに、なんで最後のいちごだけ?


 これが養殖オークの魔石効果か?


 考えていると、

 「ま、しょうがないか。戻る時は髪染めていこ。」

 と、とことん軽くいちごが言った。


 「千夏。この国、髪染め、ある?」

 「ん?あると思った。」

 「黒は?」

 「それは無理だな。基本金髪か茶髪の世界だから。あって、ダークブラウン。」

 「ま、いいか。雰囲気変わるし。」


 相変わらず、迷わず『戻れる』と信じているいちご。


 ……

 強いなこの人。


 勇者返還。

 いまだ具体的には分からないままだけど、それでもやはり帰りたいと思う以上。


 わたし達は諦めるわけにはいかないのだ。


 「で、時計の話に戻すけど。」




 


 

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