第27話 素敵なスキルの生やし方

 うーん、らちが明かない。


 千夏と共に、城下の市民街に出かけ18号を探して3日目。


 国の広さが『県』くらいとは言え、城下町全てで『市』くらいあるよ。

 1千万都市東京‼まではいかなくとも、どうしても人口はその世界の中心部に集まってしまう。


 「戸籍なんか無いから知らん」と、千夏にはすげなく返されたが、多分数十万人はいると思う、この城下に。


 この中から1人を探すって、無理ゲー過ぎる。


 こういった場合、小説や漫画ならどうするっけ?


 私は別に、好きでその手の本ばかり読んでいたわけでもなく、余りに情報が溢れていたので目にする機会があった、程度の知識量だ。


 知らないわけじゃない、程度。


 ああ、でも中学時代まで遡れば、当時もう格闘技は始めていたし、息抜きでゲームなどはしたな、結構。


 人探し……

 ゲームの世界で人探しねぇ?


 「あっ‼」 


 思いついたのは『気配察知』。


 自分に向かった敵意を探し、対処する。


 ああ。

 あと大きな魔力反応を感知し、魔物による敵襲を知るとか言う、『探索』みたいなパターンもあるな。


 元が総合格闘技の選手だ。


 この手の話は現実でも理解出来る。

 ああ、

 『こいつ左手極めに来てるな』とか、

 『フェイントかけて、足元へタックルか』とか、相手の狙いが肌感覚でわかることがある。


 ならやってみようと、市民街を歩きながら、私は意識を外に向けた。


 少年漫画の修行とも言う。

 まあ、やってみましょう。


 パーソナルスペースを押し広げる感じだ。

 体の周囲を覆っている、『警戒心』みたいなものを外へ広げると、

 「ん?」

 いきなりの反応。


 背後から手を伸ばす男がいる。


 アルスハイドの治安など知らないが、10中8、9、すりだと判断。


 私は軽くステップして躱し、男の手が宙を切った。


 「え?」


 間抜け面の男の腕を掴み、背負ってはいない、本当に力任せの投げ方だけど、石畳の道に叩きつけた。

 「ぐぇっ‼」と、男の肺から息が漏れる。


 勇者のパワー、マイナスでもすげえな。


 「なに?すり?」

 「うん。アホだね、こいつ。勇者に手を出すって。」

 「まあ、アホだとは思うけど、いちごが初見殺しなのも悪いと思うよ。髪色、完全にこっちの人だし。」

 「ああ、なるほどね。」


 緊張感皆無の会話をしていると、『食料召喚』の時、数や銘柄を聞いてくる脳内の声が、

 「『気配察知』、『魔力感知』のスキル獲得しました」と、言う。


 ステータスを確認すると、


 ……オオサキ・イチゴ(26)……

 職業  勇者(マイナス)

      ・

      ・

      ・

 スキル 食料召喚

     気配感知

     魔力感知


 おお。

 スキル、生えたよ。


 「なに?」


 怪訝な顔の千夏に、今あったことを説明する。


 「うわ、マジかぁ。スキルって、後天的に増やせるんだ。

 う、うーん?でも、『気配感知』とかって、元々が武闘派のいちごゆえな気がするし……

 ん?うーん……」

 

 しばらく考え込んだ千夏が、急に驚いて目を見開いた。


 「どった?」

 「スキル、生えた。」

 「ほえ?」

 「『薬品合成』。」

 「は?」


 いや、なんで?

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