第51話 引きこもり勇者のやり直し

 本当に、ここにいていいのだろうか?


 ドラゴンステーキは美味しかった。

 前の世界でも食べたことが無いレベル。

 口に入れたらとろけるようで、脂もくどくなく、サイコー‼️


 米と合う。

 麻婆豆腐も美味しい。

 豆腐なんていつぶりだろう?


 ただ、饗宴が終わり落ち着くと、

 『ダイジョブだろうか?』と不安になる。


 アタシは、この世界に来て引きこもっただけ。

 何の活動もしていないのだ。


 勝手に召喚して、他人の日常を壊しておいて、協力しなきゃならない義理など無いが、それでもここにいる人達がスゴ過ぎる件。


 馬鹿みたいにでかいドラゴンを、ワンパン(ワンレーザー?)で倒す千夏とか、そのドラゴンを持ち上げたいちごとか、赤ちゃん連れの世奈は謎だけど、非常識のかたまりみたいな人達だった。


 幼女親衛隊の3人も、実はこの世界に初めて『魔物避けの結界』をはった功労者らしいし……


 って言うか、『魔物避けの結界』って何さ⁉️

 いつの間にそんなものが⁉️

 勇者、完全に必要なくなってるじゃん‼️


 残る1人の雨月さんも、知識チート?の凄い人らしいし……

 

 ……

 なんでだろう?

 この人だけ、呼び捨てにし難いよ。


 周囲との差に圧倒されて、また少し引きこもりたくなってきたアタシに、

 「んじゃ、ほむらは王宮チームね」と、当たり前に言ったのは、千夏だった。


 「王宮チーム?」

 「ああ。

 朔夜達は返還の魔道具……って言うには大きいかな?そう言う装置を作り出す。

 雨月は過去資料から、返還時の代償のヒントを探す。

 で、わたしやいちご、世奈が王宮チーム、あなたはここね。」

 「で、何をしているの、王宮チームは?」

 「んー、そうだなぁ。ここにいる以外にも召喚された人はまだいるから、彼らに会って情報収拾。後は朔夜達の護衛。」

 「はい⁉️護衛⁉️」


 護衛とか言われても、アタシに戦闘力は多分無い。

 って言うか、護衛が必要な状態って?


 「うーん、ほむら、15号と16号の事は知ってる?」


 アタシの直前の召喚勇者の話は、引きこもりでも噂が届いてくるくらいだった。


 「あー、なんかヤンキーだって……」


 乱暴だ。態度が悪い。


 いろいろ聞いていたが、障りがない程度に答える。


 「うん、その『クローズ』どもが……」

 「古いよ、千夏。せめて『東リベ』とか、さぁ。」

 「知らんよ、そんなの。」

 「で、そのビーバップ君が?」

 「「あんたが1番古くてどーすんのよ、ほむら‼️」」


 いちごまで混じった説明によると、彼ら2名のヤンキー勇者は、魔物相手とはいえ『暴力』が誉められ感謝されるこの世界を、かなり気に入っていたらしい。


 「だから、この世界の人のためとは言え、結界を作って勇者を失業させた、朔夜達を恨んでいる。

 何やるか分からないからさ、馬鹿だから」と、千夏がまとめた。


 「あ、でも、アタシには……」


 力がないから役には立てない。

 戸惑っていると、千夏が言った。


 「勇者マイナスの事気にしてるなら、うちのマイナスに任せてみない?」

 「はい?」


 千夏が目線で示したのは、いちご?


 多分自分でも何を言われているかわかっていないが、そこはノリ良くいちごがポーズ(戦隊ものか⁉️)

 

 「何?このマイナス勇者のいちご様に、何か用?」


 ドラゴンを持ち上げる非常識が?


 え?

 マイナス?


 

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