第91話 温泉饅頭で分からせる

 他の異世界召喚は知らないが……(笑)


 アルスハイドの饅頭王の召喚は、本人の性格そのままに、気紛れでいい加減、全くの無作為だ。


 だからどう考えても向かない人が……


 朔夜に健介、正直のおとなしめ軍団や、召喚時妊婦の世奈、性格的にヒーローには不向き過ぎる、ヤンキー勇者などがいる。


 けれど、そう考えると?


 我らが初代勇者の千夏は、偶然だろうが、これぞ勇者だ。


 素っ気ないふりで面倒見がよく、曲がった事は大嫌い、本質は優しい。


 ま……


 だから……


 世奈の元彼君が、いつか『もがれる』未来には目をつぶろう。


 「ま、落ち着けよ。」


 収拾が付かないので口を挟んだ。


 「一応そのタブレットに、」

 「『覗き見君』‼️」

 「どっちでもいいよ。そこに映るってことは、そいつは某かの感情を世奈に持っている。そう言う事だろ?」

 「うん、でも……」


 「自分も父親が映ったけど、あれは自分を想っていると言うより、金だろうけど。」

 と、雨月がまとめた。


 「雨月って、向こうで行方不明だし、血縁なら何とか出来たんじゃ?」

 「それを絶対させないように、セキュリティ最高の銀行にしてる。」

 「なるほど、ね。」


 千夏との会話から分かる。

 

 お気楽そうに見えるけど……


 雨月は雨月で複雑らしい。


 「ま、プラスかマイナスかわからんけど、その世奈の元彼君は、某かの感情を今も世奈に抱いている。」

 「うん。」

 「まあ……」

 「でも、私らの大切な『妹』のことを思いながら、別の女に色目を使うのはいただけない。」

 「それは‼️」


 『当たり前だ』と言わせる前に、宣言した。


 「だから、実験台にしようと思う‼️」


 「は?」

 「なんの?」

 「いや、この前神様に、召喚も返還も魔力のごり押しで出来るって聞いたから。」


 ポーション沼の白竜さんのことだ。

 

 ただ、知らない人からすれば、かなりヤバイ発言であり、

 「は⁉️」

 「ダイジョブ、いちご?」

 戸惑いまくる雨月とほむらに、

 「この常識無し、自重無しをなめるなよ。

 全部ホントだ」と、千夏。


 千夏さんや。

 もう少し優しい表現を。


 「雨月。チビ秤貸して‼️」

 「勇者召喚・返還装置ミニ‼️」

 「何でもいいし‼️」


 秤の片側に、まだいくらでもある温泉饅頭を1つセット。


 「雨月、そのタブレットで狙える?」

 「『覗き見君』‼️狙えるよって、何を?」

 「ごり押し転移の、『世界の壁』効果がわからんし。鋼鉄の饅頭になると危ないから、まあ、尻で。」

 「尻だって、穴が開いたら大変じゃん。」

 「んじゃ、横から‼️

 削れるくらいならいいでしょう?」


 「いや、それもどうなの?」

 と言いながら、雨月が照準を元彼の尻に合わせた。


 ごり押し召喚(または返還)の利点は、大量の魔力で対象物を飛ばすだけで、等価交換しないから魔力を永遠に奪われたりしない。


 ぶっちゃけ、私に魔力の何たるかは分からない。


 『食料召喚』をする寸前の感覚……

 モヤモヤした力をかき集める。

 握った手の中へ。


 そして、

 「か……め……は……○……」


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