第92話 最終兵器、千年饅頭‼️

 「か……め……は……○……」


 おい!

 その掛け声は止めろ。


 どうも、解説のほむらです(笑)


 いちごの言う、魔力ごり押しによる異世界転移の話は、聞いただけでは半分も分からなかったが……


 げんき○まじゃない、かめは○波だ。


 アタシには『気配感知』も『魔力感知』も無いが、『ラッキードレイン』の影響か?

 目に見えないもの……

 魔力とか、運と呼ばれるパワーの流れが、なんとなく知覚出来る。


 いちごの手の中に、魔力がどんどん集まっている。


 あれを饅頭に叩きつけ、その勢いをもって世界の壁を越えさせるつもりなんだ。


 ……

 真面目に語るセリフじゃないな。


 「はーっ‼️」


 結局最後まで『例のアニメ』の物真似で、両手を突き出す仕草と共に、いちごが魔力を叩き付ける。


 すると?


 「あっ‼️」


 饅頭が消えた。


 と、同時に、

 「出た‼️」

 て、タブレットを凝視していた雨月さんが叫ぶ。


 皆でそれを覗き込んだ。


 最初から見ていた雨月さんによると、『等価交換』の時は協力的だった、黒い霧のような恐らく『世界の壁』が、今回は違った。


 『等価交換』の時は、時計を守るように運び、対価である温泉饅頭を持ってきてくれた黒い霧が、今回は引き留めようとして振り切られる『手』のように見えたのだ。


 饅頭は『手』を振り切って異世界……アタシ達が元いた世界に現れ、真っ直ぐ軽薄男の尻に向かい……


 ベシャリ、潰れて落ちた。


 「あ‼️」

 「当たった‼️」

 「つうか、鋼鉄化してないじゃんか。」

 「……いちご、まさか期待してたの?」

 「ん?って言うか、鋼鉄化どころか、これ?」


 世奈の元彼君の尻に当たって潰れた饅頭は、周囲の皮にホワホワした『毛』が生えている。

 ……

 カビだ。

 餡の色も何かおかしい。


 「え⁉️腐ってる⁉️」

 「千年饅頭なのに⁉️」

 「……どっかの女王みたいに言うな。」


 そう。

 世界の壁を、魔力ごり押しで強引に越えた場合。


 『加護』どころか、『マイナス』が発生すると実証された。


 割れないガラス瓶。

 無限トイレットペーパーに、無限スマホ。


 今回は『腐った』。

 

 饅頭怖い。


 「あー、どこまでマイナスが起こるか分からないし、魔力ごり押し、人間には使えないなぁ。」


 しれっと言う、いちご。


 腐った饅頭、匂いもあるらしく、画面の中で元彼君と連れの女がジタバタしている。


 「あー、でも、もう少し研究したいし、これ、しばらく貸しといてよ、雨月。」

 「いいよ。『覗き見君』の使い方も教えるよ。」

 「ああ、そうしてくれ。」


 以来、朝は尻に、昼は後頭部に、夜はシャワー浴びたての、将来『もがれる』あの部分に、腐った饅頭をぶつけられ続けた優男は……


 いちごは、1週間くらいで許してあげるつもりだったようだが、3日で病んだ。


 どっと笑い。

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