第8話 勇者マイナス

 ……オオサキ・イチゴ(26)……

 職業  勇者(マイナス)


 勇者マイナス?


 ステータスの見方を教わった。

 別に大声で、

 「ステータス‼」とか叫ぶ必要はなく、念じればいいらしい。

 

 正直助かった。


 千夏の説明によれば、召喚勇者はみな、自分のステータスが見られるそうだ。


 ただ、初っ端の記述でもう引っかかった。


 「マイナスがついてる。」

 思わず出た呟きに、

 「ああ、やっぱり」と、千夏が頭を抱えた。


 召喚勇者1号の千夏の時は、王国も何せ初めてやることだからと、魔力を提供する王宮魔導師も完全なトップ10を用意した。

 あと、魔石召喚1号の18号の時も、その時ある最高の魔石を使用したらしい。


 「わたしと18号は勇者プラスなんだよ。」


 勇者にプラスがついているこの2人が、真面目に饅頭の腕を極めれば……


 腕はもげるだけでなく、果てしなく遠くまで飛んでいき、2度と見つからないだろう。


 他の勇者でももげる。確実にもげる。

 一般人と勇者は、それくらい違うらしい。


 ただ17号だけは、勇者マイナスで。


 一般人の魔力による召喚だが、その最後の方は訳も分からないまま集められたホームレスや、老い先短い老人などが混じっていた。

 明らかに、呼ぶ側の魔力不足……

 質が悪い、粗悪な魔力ゆえの弊害だった。


 「じゃ、今回はどんな魔石を使ったのか、大福に話させるから。

 いちごは、自分のステータスでも読んでて。」

 「了解。」

 「ひいぃぃぃっ‼」


 横で大福と千夏が騒いでいるが……

 気にしたら負けだ‼


 えっと……


 ……オオサキ・イチゴ(26)……

 職業  勇者(マイナス)


 体力  S

 魔力  A

 力   B

 知力  B

 

 ……

 バラバラだな、見事に。


 力がBだから、もげないのかもしれない。

 もしかしたら、千夏や、まだ見ぬ18号は、ここがSかSSなのだろう。

 

 えっと、続きは……


 魔法  ステータス

     アイテムボックス

     万物鑑定

     生活魔法


 スキル 食料召喚

     

 称号  爆食王


 ???

 食料召喚?

 爆食王?


 意味が分からん。


 取り合えず、1つ試してみる。

 気持ちの中で千夏をターゲットとし、『万物鑑定』を唱えてみると?


 ……コウダ・チカ(36)…… 

 勇者(プラス)


 体力  SS

 魔力  SS

 力   SS

 知力  SS


 魔法  ステータス

     全属性攻撃魔法

     全属性防御魔法

     回復魔法

     移動魔法

     アイテムボックス

     生活魔法


 スキル 死を覆す者(年1回)


 称号  神様の寵児


 ……

 なんだ、これ?


 さすがの勇者プラスだった。


 違和感として気付いたのだろう。


 「ん?鑑定使った」と、千夏に聞かれ、隠してもどうせバレるので正直に答える。

 「うん。万物鑑定って魔法があったんで使ってみた。」

 「ふーん?いい魔法持ってたじゃない。他は?」

 「他は……」


 言うべきか悩み、以下同文。


 「スキルが食料召喚、称号が爆食王だってさ。」

 

 「ブッ‼」と、千夏が吹き出した。

 

 「……」

 「いや、ごめん、ごめん。その……、今大福に聞いたんだけどさ。」

 「?」

 「あんたの召喚、オークの魔石だって。」

 「は?オークって、あの、豚?序盤のボスくらいの?」

 「そ、オークの魔石、10000個。」

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