第7話 召喚勇者30号 大崎いちご

 「ただ、いくつか腑に落ちないことがあるのよね」と、千夏が首を傾げた。


 ……?

 腑に落ちないとは?


 「って言うか、なんで召喚されたの、いちご?」


 うわっ‼

 失礼だな、このロリババア‼


 「なんで召喚されたかって、そんなの私が知りたいわ‼」

 ついムキになって大声を出すと、

 「ああ、そういう意味じゃなくて」と、詳しく説明してくれた。


 最初の魔石召喚の勇者18号は優秀で、後から召喚された24号、25号と協力し、アルスハイド王国全土をカバーする、魔物の侵入を遮断する結界システムを作り上げた。


 「結界って、聖女とかが張る?」

 「ああ、なんかそんな事言ってたな。この場合『聖女が人生を犠牲にして……』ってのがお決まりだけど、それは気の毒だから魔石を使うの、どうの。」


 優秀って、そっち方面に?

 ヲタクじゃん、18号。


 「で、その結界システムが起動して、国が安全になったのが2日前。」

 「は?」

 「ね?」

 「うん。」

 「なんで召喚されたの?でしょ。」


 うわーっ‼

 マジか、これ‼

 

 魔物討伐の切り札が勇者なら、すでに呼ばれる理由がない‼

 なんのつもりだ、あの饅頭(王様)‼

  

 「で?説明してくんない、大福。」

 殊更冷たい言い方をした千夏。


 気配感知とか、そういう力があるのかもしれない。

 なにせ、勇者1号だし。


 扉が開いて、頭をかきかき、饅頭が顔を出した。


 客間の扉の向こうで、私達の話を盗み聞きしていたらしい。


 「いや、もう手続きが終わってたんだよぉ。」


 甘えた声出すな、気持ち悪い。

 

 饅頭によれば、勇者召喚は『召喚の間』にある構造物で行われる。

 イメージは天秤秤。

 ただし、本当は秤じゃないので、ギッタンバッタン上下はしない。


 右の皿の魔力(人間だったり魔石だったり)と釣り合うだけの勇者が、左の皿に召喚される。


 「人の魔力を使った場合、一瞬なんだよぉ。」


 だから甘えた声出すなし。

 

 右の皿に人を乗せ、装置を起動、即召喚。


 ただし、魔石を使った場合何故か数日間……長いと1週間ほど間をおいて召喚されてくる。


 結界システムが出来上がって、アルスハイドが安全になったのは2日前……


 「もう召喚しちゃってたんだよぉ」と、饅頭は泣いた。

 ただし涙は出ていない。

 お前は昭和日本のぶりっ子か?

  

 「だから、召喚した時謝ったじゃないかぁ。」


 「てめえ。(腕を取る)」

 「うえ?」

 「謝って……(腕を絡める)」

 「また?」

 「済む問題だと思ってんのか‼(そのまま後ろへ倒れる)」


 「ぎゃぁぁぁっ‼」

 再度腕を極めてやった。

 饅頭大騒ぎ。


 「うん、それ。第2の疑問」と、千夏が言う。

 

 「なんでもげないの?腕。」


 ……

 怖いよ、姉さん。

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