第46話 最大の『非常識』襲来

 見たことがあればその方が問題だが、

 『竜なんて初めて見た』と、うちはスカイ・ドラゴンを見上げていた。


 女の人は、妊娠すると変わると言うか、普通だと見えないものを見る場合がある。

 チャンネルが合う、と言うか……


 ハイを身籠って、黒い影のようなものとか、透けた血塗れの女の人とか、今まで見えなかった世界を見るようにはなっていたけど、さすがに『竜』は初めてだった。


 これ、大きい。

 

 飛んでいてくれた方が全体像がよくわかる。

 討伐されて地に落ちると、視界に収めにくい大きさだ。


 打ち上げられた鯨とか、ダイオウイカを見る感じかな?


 「あれだけ派手に討伐したし、そろそろアホが来そうだから。」

 言いながら、千夏さんが仰向けで転がるドラゴンの上に、軽く飛び乗る。


 いちごさんの、垂直50メートル?ジャンプには及ばないが……


 『階段1段飛ばし』くらい気軽に、簡単に5メートルはジャンプした。

 千夏さんも底がしれない。


 「レーザーメス。」

 何故か小声で言いながら、光魔法の出力を調整、ドラゴンの胸辺りを切り開いて取り出したのが、

 「はい、朔夜」と、投げ渡す。

 びっくりするくらい深い、けれど透明度は損なわれない、人の頭より大きな蒼い石だった。


 「すぐに魔石馬鹿が来るから。結界用にアイテムボックスに確保して。」

 「あ、はい。」


 ああ、あれが異世界名物、『魔石』か。


 感心して見ていると、門の方から、

 「ドラゴン討伐したんでしょ⁉️」と、女性の声が聞こえる。


 凄い勢いで走って来た。

 ご新規さんはドン引きな空気を読もうとせず、

 「魔石‼️魔石ちょうだい‼️」と叫んでいる。


 また、濃い人が出てきたなぁと思っていると、

 「魔石‼️」

 「えっ、いえ、アタシは……」

 「魔石ちょうだい‼️」

 逃げ遅れたほむらさんに絡んでいる。


 「止めい‼️」と、千夏さんが物理(後頭部チョップ)で止めた。


 「あれ?千夏ちゃんじゃない?」

 「魔石は倒した人間の権利だ。ちょうだいじゃない。」

 「また、堅苦しいことを。ちっ、若造だけなら騙せたのに。」

 「だから、騙そうとすんな‼️」


 千夏さんとご新規さんはお互い知っているようで、遠慮なく言い合っている。


 うちの視線に気付いたのだろう、千夏さんが紹介する。


 「あー、こいつは勇者7号。唯一の外国人勇者で、」

 

 そう言えば、イントネーションがおかしい。


 「しかも、唯一のわたしの年上だ。」


 ……

 えっ⁉️


 千夏さんは、小学生に見える36歳だ。


 えっ?それより上?

 確かに30代には見えるけど?

 えっ⁉️


 言葉の情報量が多過ぎる。

 混乱するうちに向かって、

 「私、周雨月(しゅううげつ)。38ね」と、手を振ってみせた。



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