第22話 召喚勇者の現状認識
「やった‼️魔石でも召喚出来たぞ‼️」
「アルスハイド、万歳‼️」
いろいろな声は聞こえてきたが、僕に近付く者は皆無だった。
え?
嫌われてる?
わざわざ召喚しておいて?
考えてみれば僕の格好も大概異常で、雨の中で暴行されていたから、全身ずぶ濡れ。
なんなら靴も飛んでしまい、片足靴下だ。
顔は腫れ上がっていたろうし、服もドロドロに汚れている。
あれ?
失敗した?
僕は異世界でも浮いてしまうんだろうか?
……
ため息混じりで顔を上げると、実は目の前に人がいたことに、今更気付く。
「っっっ‼️」
「⁉️」
そこにいたのは、豪華な衣装にマントを装備、頭に王冠を乗せていた。
誰が見ても王様だ。
よく太って、丸い。
大福?饅頭?
マントが赤いからラディッシュに見える。
何故だろう?
ラディッシュ王は、やたらとビクビク、警戒していた。
「あ……君は投げないんだ。警戒して損したな。」
は?投げるって?
「いや、勇者は召喚されるとガチ切れして、物を投げるから。」
妙なセリフと共に、ラディッシュが指し示した石壁には……
「はい?」
石にリポビ◯ンD、刺さってますが?
いや、石壁にリポDが刺さるのもスゴいが、割れないビンもスゴ過ぎる。
あ⁉️
あそこに刺さっているのは、ボールペンだ。
100均で、下手したら10本くらい入っている、お洒落さの欠片もない、あれ。
え⁉️
投げないと、駄目?
僕は在原君に殴られていたから、カバンも何も持っていない。
財布もスマホも元の世界に置いてきた。
唯一持っていたのは、制服の内ポケットに入れっぱなしの生徒手帳だけ。
僕は取り出して、それを壁に投げつけた。
ダーン‼️と大きな音がして、手帳はボールペンの隣に突き刺さったよ。
後で説明された、世界の壁の恩恵だ。
絶対強度の生徒手帳は、記念に壁に刺しっぱなしにした。
その日はそのままで休んだ。
王宮の中の客間に案内され、食事も出てきたが……
実は全然食べられなかった。
在原君から、そして嫌気がさしていた現実世界から解放されて、一気に疲れが出たみたいだ。
翌朝まで倒れるように寝た。
ちなみに朝食は美味しかった。
せっかくの食事をしなかった、昨日の非礼は謝った。
召喚2日目は、この世界の説明を受ける。
説明役は、小学校の高学年に見える女の子で、けれど初代勇者らしい。
「もう、わたしは引退だって言ってるのに、都合がいい時だけ頼って、あの大福」と、ブツブツ文句を言っていた。
千夏さん曰く、魔物から国を守る為に召喚されたらしいが……
なんで、僕?
僕は全く強くないよ。
人違いじゃない?
「まあ、なんとかなるから心配するな」と、千夏さんが言った。
何もない空間からショートソードを出し(アイテムボックス?)、
「これ、君にやる」と。
「聖剣とセットで出た短剣だ。
素人だと、長い剣だと勢いあまって自分を切る。」
はい?
聖剣?
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