第88話 温泉饅頭、スーパーアイテム化する

 モグモグ……

 「ふぁー、ひゃっぱひふまい、ほんへんふぁんじゅふ(はー、やっぱ旨い、温泉饅頭)」


 モグモグ……

 「ほうか?ろこもほなひってゆふふぁ(そうか?どこも同じって言うか)」


 モグモグ……

 「ひや、やっぱひくひゃつでひょ‼️(いや、やっぱ草津でしょ)」


 モグモグ……

 「ひゃんたら、くひにほのいれてひゃべらにゃい‼️(あんたら、口に物を入れて喋らない)」


 モグモグ……

 「ひやひや、あんひゃもいっひょら、ひゃむら(いやいや、あんたも一緒だ、ほむら)」


 モグモグ……

 「ふぁい、みなひゃん、おひゃ(はい、皆さん、お茶)」


 モグモグ……

 ……

 いや、何、このカオス。


 全員温泉饅頭in口。

 何を言ってるか分からない件‼️


 美味しいんだけど、水分が……


 ちなみに、この温泉饅頭、私が『食料召喚』した訳じゃない。


 雨月が言い出したのだ。


 「勇者召喚は、魔力と勇者の等価交換‼️なら、物々交換は可能なのか⁉️」


 要は、勇者召喚・返還装置ミニを使ってみたいと言うことだ。


 「じゃ、これ使っていいよ」と、私は腕時計を外す。


 「何これ?」

 「総合格闘家時代に使ってた。結構な衝撃体制と防水性能があって、アウトドアやる人御用達。シリアルナンバーも入ってて、たぶん下取りしても万はくだらないと思うよ。」


 「おーっ、ラッキー‼」


 受け取った雨月は、時計を魔道具の皿の1方に置く。


 「いいの?いちご。」

 「ああ。結局時計はスマホ見ればわかるし、実質使ってないし。」


 起動するために魔力を流す。


 と⁉


 「えっ?」

 「マジで?」


 時計の存在が希薄になった。

 

 私達の世界に召喚(返還?)されようとしている?


 ノイズの入ったテレビ画面のように、薄くなったり濃くなったりを繰り返す腕時計に、注目が集まった。


 その横で、雨月が高速でタブレット……で、もういいや、『覗き見君』ことタブレットを高速で操作している。

 

 次の瞬間、時計が消えた。


 そして一瞬の間をおいて、温泉饅頭(箱入り2000円)がドーン‼と6箱召喚された。


 「は?」

 「なんで饅頭?」

 「草津……って書いてある?」

 「雨月⁉」


 全員がそれぞれの表現で説明を求めた結果?


 雨月はあのタブレットで、世界地図から拡大拡大で、草津温泉の土産物屋まで行きついた。


 いや、どういう才能だよ⁉


 で、座標を指定し物々交換、結果の温泉饅頭召喚だったのだ。


 「いや、面白いの見れたよ。」


 ヒラヒラトとタブレットを振って見せる雨月。


 アルスハイドから飛んだ腕時計には、黒い靄がまとわりついていたらしい。

 魔力は、装置の軌道にしか使っていないから、

 「あれは『世界の壁』そのものだねえ」と、彼女は言う。


 世界の壁が時計を届け、その足?で『等価』な量の饅頭を奪ってきた。

 

 勇者召喚・返還の流れを『饅頭』で確認した件‼


 全員でタブレットを覗き込んだが、現在進行形で温泉街でパニックが起こっている。


 そりゃ、いきなり饅頭が数箱消えて、そこに腕時計が現れるなんて超常現象……

 

 いや、すまん。


 「ん-?たぶん?」

 「異常は無さそうですね。」

 「分からないけどな。」


 『世界の壁』を越えた筈の、『日本→アルスハイド』だとスーパーアイテムになっている腕時計に、異常は見られない。


 『アルスハイド→日本』なら大丈夫なのか、相手が無機物だけによくわからないな……


 なら、饅頭の方はと全員でチェックしていると、世奈が気が付いた。


 「うぇ?」

 「ん?」

 「どした、世奈?」

 「あの、これ。」


 指し示したのは『賞味期限』。


 302×年って、1000年先になってますが⁉


 「実験したいけど確認しようがない」と呟く雨月。

 こいつも大概マッドだった。


 とりあえず食べてみようと言うことになり、1箱開けた。


 味は普通。

 温泉饅頭は温泉饅頭。

 1000年先も元気だけれど。

 まあ、饅頭。


 「これで、物々交換が可能なことはわかったね」と、雨月がまとめた。


 「まあ、勇者返還には使えないけどね。1人送り返して1人受け入れていたらきりないし。」

 「……雨月、あんた。」 

 「じゃ、なんでやったし?」


 参考記録でしかないが、まあ1歩前進か?

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