第87話 実験しよう、そうしよう
「出来たよぉ‼️みんな‼️」
鳩君達が王都を出た翌日、ハイテンションで王宮を訪れた雨月だった。
この人が元気だと、何をやらかすか分からない。
「何?」
十分警戒しながら尋ねると、
「ほら‼️前から言ってた魔道具‼️」と、アイテムボックスから出したのは、雑誌サイズの四角い板だ。
「タブレットだな。」
「タブレットですね。」
「タブレットだね。」
いちご、世奈、ほむらが口を揃える。
わたしはノートパソコンだったしな。
ふーん?
「これはコウゾウ君の大傑作、『覗き見君』だよ‼️」
「『覗き見君』?」
「って、コウゾウ君って誰?」
「コウゾウ君はコウゾウ君だよ。えーと、勇者18号?」
「山田朔夜だ。構造把握はスキル名だ。」
話がなかなか進まない。
「これは『世界の壁』の向こう側、自分達の世界を見ることが出来る魔道具だよ。これに魔力を通すと。」
ブン‼️と起動音がして、『覗き見君』に映像が現れる。
わたし達が知っている世界地図だ。
「これ、拡大出来るから、場所をピンポイントで指定して覗き見たり、」
画面をスクロールすると、地図の下方に赤いバーが映し出される。
「ここ触ると、触った人に関係のある人物が見れるようになる。」
「へー。」
「で、誰が試す⁉️」
「「「「‼️」」」」
そう来たか。
ここにいるのは、わたしを含め、全員が元の世界に某かを残してきた召喚勇者だ。
誰もが元の世界は気になるものの、万が一心配されていたらやりきれないし、気にもされていなくとも、それはそれでやりきれない。
自分の存在を伝えられず、帰る手立てもないままなら、いっそ『知りたくない』が本音なのだ。
召喚11年目に入ったわたしや、7年以上になる雨月は当然、2年目のほむら、数ヶ月のいちご、世奈でも、簡単には見たくないのが元の世界である。
「ま、こうなると思った。」
いや、なら何故聞いたんだよ、雨月。
「で、ここでもう1つ‼️」
続いてアイテムボックスから出したのは、小さな天秤ばかりのような、ここにいる全員が見たことがある形。
「ん?」
「これって?」
「え?召喚の間にあった?」
「そう‼️これもコウゾウ君の大傑作だよ‼️勇者召喚・返還装置ミニ‼️
実際に小型の物なら『世界の壁』を越えてやり取り出来る、本格派‼️
これで魔力の流れを観察しよ‼️」
「いや、本格キッチン玩具かよ⁉️」
今回は、『コウゾウ君』呼びはスルーされる模様。
「対価を支払いさえすれば、日本でも、外国の物でも召喚出来る筈だから‼️」
雨月の大暴走は止まらない。
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