第31話 実践‼️薬品合成‼️

 「あの、なんで?」と、戸惑い顔なのが、勇者18号なんだろう、


 普通の、気の弱そうな青年だ。


 「僕ら、気配遮断のスキルがあるのに?」


 見つけられたのが腑に落ちないのだろうが、今はそれよりも気になることがある私だった。


 ドアを開けた途端、病人がいる部屋独特の匂いがあった。


 人は病むと、毎日身綺麗に出来ないし、熱があれば汗もかく。

 その匂いが、病の匂いとして認識される。


 「ん。その話はあとで。」


 私は18号の横を通り抜け、部屋の中へと足を進める。

 いつか、同じように『病』を探す、千夏も上がり込んでいる。


 2人同時に奥のベッドの脇に立った。


 荒い息の、小学生になるかならないかくらいの、幼女が1人。


 「これは……」と、千夏が呻いた。


 「千夏。どっちだと思う?」

 「肺炎、は確定。

 マイコなら抗生物質だけど、ウイルス性なら抗ウイルス薬だし……」

 「どうする?」

 「原因の確定は、日本の医学だって手間がかかるんだ……

 マイコプラズマ肺炎ってことで、抗生物質から始めよう。」

 「もつ?」

 「外れたら厳しい。でも、やれることをやろう。もたせよう。」


 方針が決まった。


 抗生物質は、私の『薬品合成マイナス』では作り出せない。

 千夏が、宙のあらぬ場所を見上げ集中。

 次の瞬間‼️


 「あっ⁉️」


 千夏が、祈りのように合わせていた手のひらの間から、ポロポロと薬が沸いてきた。


 「嘘だろ?カプセルだ。」


 呟いたのは、24号か、25号か。


 アルスハイドの薬を見たことがないが、恐らく丸薬か、粉末か、それを溶いた水薬か?


 千夏が出したのはそのどれでもない、カプセルタイプの薬だった。


 「18号‼️……ううん、山田朔夜君だったな。

 少女をヒールして。」

 「あ、はい。」

 「24号と25号。名前は?」

 「伊藤健介、です。」

 「高橋正直。」

 「分かった。健介君、コップに水を。」

 「はい。」

 「正直は、洗面器に水とタオルを。私がこの子の体を拭くから。」

 「は、はい‼️」


 バタバタと動き出す。


 朔夜のヒールで落ち着いた瞬間に、

 「薬、飲んで。えっと……」

 「リーシャです。」

 「分かった。リーシャ、お薬、飲もう。」


 千夏がカプセルを差し出すと、熱に浮かされ抵抗する素振りもなく、少女は抗生物質を嚥下した。


 「これで一先ずは様子見だね。後は任せた、ペーパーナース。」

 「おうよ。ご苦労、ペーパードクター。」


 男共を遠ざけて、私はリーシャの体を拭いた。

 洋服も着替えさせ、汗が染みたシーツも代える。


 一通り終わる頃には、少し息遣いが落ち着いた気がする。

 マイコで正解かも知れない。


 良かったなとホッとして、私は少女の側を離れた。


 朔夜、健介、正直が、私が来るのを待っていた。

 

 千夏も交え、リビングで経緯を話す。

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