第19話 どこまでが食料?
「この米は、召喚勇者であるいちごがスキルを使って、反則気味に出したものだから。」
千夏の説明は理にかなっていた。
召喚勇者はこの国のバグだ。
必要で、召還した。
しかし本来ここにあってはならない者で、更にそこから派生した物資を使用してしまえば、世界のバランスが崩れてしまう。
なるほど、と納得。
私の感覚だと、まだ4、5トンなら米を出せる。
出せば彼らは喜ぶだろうが……
それはあまりにも安易で、危険な選択と言えた。
無から有は生んではいけない。
「そうですか。」
料理長は残念そうだが、引き下がった。
「美味しかったもので……」
その顔を見ていたら、私の中で妙な感情が動き出す。
うんうん。旨いものを諦めるのは切ないねぇ。
何とかしたいねぇ。
……
いや、待て。
私、こんな思考回路していたか?
『爆食王』の称号に引きずられてない?
とは言え、思いついてしまった以上、提案する。
「ねえ、千夏。」
「ん?」
「ちょっと実験してみたいんだけど。」
そこまで自分は騙せないが、私がもし食糧だと信じられればこの能力、自転車だってなんだって召喚出来る気がした。
「なるほど。あんたにとって米はあの形だから、10キロ入りで召喚された。」
「そうそう。液体ミルクも、あれが実習で説明されたメーカーだから。」
「うん。」
「で、私にとって、種籾も食料だけど?」
種籾から育てるなら、世界のバランスは崩さないだろう。
「ああ、なるほど」と千夏は頷き、
「やってみれば」と、Goサインを出した。
「でもな、種籾のイメージがな。見たことないし……」
「はい、これ。」
考え込む私の前に差し出されたのはスマートホン。
画面には辞書機能を使った、挿絵付きの種籾が‼
「えっ‼嘘?これ、携帯?」
「は?なんで生きてるの、充電‼」
1名ずれた驚き方をしていたが、スマホを見せてくれた世奈が、
「よくわからないけど……
あの日フル充電で召喚されて、以来減らないんだよね、これ」と、戸惑いながら話す。
「もしかして‼」
「世界の壁だ‼」
私も何となく入れていた、ポケットのスマホを動かすと……
召喚時と同じ、79パーセントのままだった。
あれから数日、充電、まったく減ってない。
割れないガラス瓶。
無限トイレットペーパー。
今人類?は、無限スマホを手に入れた。
世界の壁、すっげぇ。
とにかく、イメージが固まった種籾を召喚。
『銘柄を指定してください。』
知らん‼
今回召喚した、ニコマルを指定。
『個数を1から100で指定して下さい。』
100で‼
『座標を……』
目の前のテーブル‼
瞬間、バラバラと種もみが100粒降ってきたよ。
「なんでバラバラ?」
「種籾が売られている単位なんか知らんし。」
「ああ、なるほど。」
手で十分持ち運べる種籾を渡しながら、千夏が料理長に説明している。
田植えなんて説明出来ないし、日本とまるで同じ品質にはならないだろう。
それでも秋には、アルスハイド産の米が食べられるかもしれない。
「じゃ、部屋に戻って話しを詰めよう。」
千夏が急にやる気になったのは?
懐かしい、米の味のお陰かもしれない。
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