第24話 留守番勇者 坂谷世奈

 ハイを生んで、1週間経った。


 数日前から千夏さんといちごさんは、町に出て他の召喚勇者を探している。

 うちは、王宮で留守番だ。


 人探し……


 もっと簡単だと思っていた。


 いやいや、なかなかバカになら無い。


 考えてみればここは異世界。

 スマホ無し、SNS無し、GPS無し。


 ああ、そう言えば、うちらの無限スマホ(電池が減らない)‼️


 基地局もネット環境も無いから、通話やネットは無理でも、動画や写真、元々インストール済みの情報などは使える。

 

 うちはハイの写真を撮りまくっている。


 あと、原理は分からないが、いちごさんとの間は通話可能だ。

 トランシーバー?


 話が逸れた。


 それにしても、城下町にいることまで分かっていて、なんでそんなに出会えないのか、首を捻るうちに、

 「勇者にもいろいろいるんだよ」と、千夏さん。


 「わたしみたいに、『もういいだろう?』で引退した人もいるし、初めから……ああ、性格的にって意味だけど、戦いに向かなくて裏方に回った人、引きこもった人もいる。」


 「はあ?そんな子いるんだ?」

 「みんながみんな、いちごみたいに図太くないから。」

 「喧嘩売ってんのか?」

 「んにゃ、ただの事実。」

 「余計ムカつく……」


 「で、人間による魔力召喚の終わりの方は、人格的にヤバイのがいてさ。」

 

 ヤバイの?


 「いわゆるヤンキーってやつ。15号と16号なんだけどね。

 強い自分に酔い、意味がないほど残忍に、暴力を楽しむタイプだった。」


 幸い、アルスハイドの一般市民に迷惑は掛けなかったので……


 いわゆる『ひゃっはぁー‼️』するタイプだが、調子に乗って無理矢理女性に手を出したり、物を盗ったりの犯罪までは冒さなかった。


 だから、放置したらしいのだが……


 「こう言う輩にとっては、18号が作った結界システムは迷惑千万だったわけ。」


 結界が無ければ魔物が襲ってくる。

 村々は壊滅し、そこに飛び込んで破壊の限り、暴力の限りを尽くした上、感謝される。

 

 彼らにとって完璧な世界は、アルスハイドの安全化と共に消滅した。


 平和な暮らしを手に入れた住民にすれば、あまりに失礼な感情だったが……


 「面白くないんだろうね」と、千夏さんは苦笑いした。


 彼らは敢えて結界の外に出て、魔物を狩る冒険者をしているらしいが、今までのように祭り上げられることもなく、不満らしい。


 「この馬鹿どもが18号に攻撃する可能性があるからね。24号、25号と一緒に、見つからないように隠れているんだ。」


 ふーん。

 勇者って言うのも、大変だなぁ。

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