3章 王宮と図書館と市場の三角地帯
第41話 引きこもりを餌付けします
「はあ、そんな人がいるんですねぇ」と、世奈が呆れた顔をする。
今朝、引きこもり勇者の説明をした時の反応だ。
腕の中で、ミルクをたらふく飲み干した、ハイがもちゃもちゃ動いていた。
「そ。だからさ、ちょっと仕掛けてみたいからよろしくね。」
「わかりました。任せて下さーい。」
そのまま千夏と朔夜の隠れ家を訪問、話し合いをし今に至る。
無限スマホは、18時半。
まさに夕食時だった。
普段なら世奈の部屋に集まって夕食をする私達だが、今日は少し様子が違う。
4膳目がある。
運べばいいだけ、完璧に配膳用のトレーに乗せられたそれが……
「やばくない?」
通常ならポーカーフェイスで流すはずの、千夏が言った。
「うん、やばいね。」
「……多少冷めてもありだと思う。」
「まあ、この世界、魔力を使ったレンジっぽいものあるしね。」
話は決まったとばかり、世奈まで加わった3人で頷き合う。
配達は食事の後と相成った。
本日のメニューは、
『白米』と、
『さんまの塩焼き2尾』と、
『やっこ豆腐』と、
『肉じゃが(肉が豚の東日本仕様)』と、
『キャベツの味噌汁』だ。
旨そう過ぎて、引きこもりが最初とか意味が分からん。
「って言うか、1人2尾って多いでしょ?いちごだよね」と、ブツブツ文句を言ってる千夏さんや。
それ、2尾目。
「でも、食料召喚って便利ですよね。さんま、脂がノリノリで、まるで旬のものです。」
さんまの旬がわかる16歳も凄いけど、箸遣いや食べ方がキレイで、やっぱ『いいとこのお嬢様』だよなと思う、世奈のことは。
「うにゃぁ。」
急にハイがむずかり出した。
「あ、お腹すいた?ハイ?」
慌てて食事を中断しようとする世奈を制した。
「ダイジョブ、世奈。私もう食べちゃったから。
それに、たぶんこれ、おむつの方でしょ。」
手早く処理をし、今1度ベビーベッドに寝かせると、ハイはキャラキャラと嬉しそうな声を上げる。
少しずつ瞼が重くなるのを見て、柔らかくトントンと調子をとる。
やがて、寝た。
……
ううぅ……
かわええよぉ……
「いちごさん。」
あきれた声で世奈が言う。
「怖いよ、あんた。」
うるさい、千夏。
子供好きなんだよ‼
どうやら、可愛過ぎて目が離せない、真顔が怖かったらしい。
夕食と赤子を堪能した後、私が代表して引きこもり部屋に食事を運んだ。
3DKのラプンツェルだ。
しっかりと鍵のかかった出入口にはいかず、側面にある『ペット用のドア』みたいな場所を押すと、食事を置く場所がある。
ったく、至れり尽くせりだな、17号。
声はかけない。
黙ったまま、食事を置いて踵を返すと、
「えーっ⁉️何でぇっ⁉️どういう事ぉ⁉️」と、叫び声。
前話、サスペンス調に閉めたが……
単に日本食で餌付けした件。
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