第109話 ほむらさん、大考察

 「悪い、千夏。4号だった。」


 夕食が終わったタイミングで、いちごが今日のことを話し出した。


 昼間、急に、

 「デカイ魔力が教会に⁉️」

 と叫び、飛び出して行ったのだ。


 後で戻った世奈から、急襲があったのは聞いていたが……


 なんと、今回の新しい鳩君仲間、世奈の『鉄壁』を一部壊したらしいのだ。


 え?

 化け物なの、そいつ?


 世奈の『鉄壁』は、勇者プラスの千夏にも壊せない。


 実質、今ある最高峰の防御系魔法なのに⁉️


 「あいつには、『常勝農家』の称号があるから……」


 ため息まじりの千夏が言う。


 いや、なんなの、その称号⁉️


 って、やっぱりこの世界の神様なのか、『世界の壁』そのものなのか、アタシ達で遊んでいるよ。


 うわ、腹立つ……


 「確認したの、いちご?」

 「ああ、本人に聞いた。」

 「そっかぁ。」


 珍しい、肩を落とす千夏。


 千夏はアタシ達に、あまり感情のブレを見せない。


 年上と言うこともあるが、常に飄々として、『弱味を見せない』と言うか、頼りがいがある『初代勇者』をしている。


 成り行きかもしれない。


 それでも必死でアルスハイドを守ってきた彼女を、そこまで落ち込ませる4号って?


 朝、3人目の存在をいちごが感知した時、軽く聞いた。


 4号勇者、田畑力。

 農家の息子で、誰より1番アルスハイドに召喚された、その事実を憎んでいる。

 当たり前に父母を愛し、真っ直ぐな正義感から1年くらい前、この世界の人間とも揉めている。


 「根は優しい、曲がったことが嫌いな子だよ。」


 千夏のまとめが『答え』だった。


 千夏は4号を気にいっていた。


 じゃあ、なんで4号は変わってしまった?


 この世界が嫌い過ぎて、

 『いっそ困らせてしまえ』と思った?


 ……


 わからない。


 同じ、この世界に召喚され大混乱した、経験者のアタシにもわからない。


 アタシは外に出ることを拒んだ。

 折れるタイミングを逃して、早々後悔したけれど、取り敢えず『拒んだ』。


 4号は、それでも勇者活動もしていたらしい。


 アタシより大人だ。


 なら、何故?


 「キレるなよ、千夏。」

 と前置きし、いちごが語った真実は‼️


 「多分人質とられてるよ、4号。」

 「「はっ⁉️」」

 「人質⁉️」

 「『待て‼️』って言ったら、『人質とられても待たない‼️』って。

 なんの脈絡もなく返したし……」


 うわ、鳩君達、本当にどうしようもない馬鹿なんだ。


 最悪の馬鹿だ。


 事情を中途半端にしか知らない、アタシでもそう思った。


 瞬間寒気がすると言うか、震え上がるような気配が起こる。


 「あの馬鹿ども……」


 うわっ‼️マジ切れだ‼️


 あの優しい千夏さんが、マジ切れしていた。


 




 

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