第3話 かなり豪華な部屋でした

 「イテテテ……」

 わざとらしく腰をさすると、

 「バーカ」と、ロリババアに蔑まれた。


 「わたしが真面目にヒールした以上、古傷だって完治している。」


 うん、確かに。

 視界が異様にクリアになった。


 治ったんだ?

 余計ムカつく。


 「改めて。わたしは幸田千夏。初代召喚者で、今36。あなたは?」


 差し出された手を見て。

 顔を見て。


 この千夏って人、マジ若い。

 10代にしか……って言うか、小学校高学年にしか見えない‼️

 しかも、発育が悪い方の。


 黒髪ショートで、目が大きくて、童顔。

 身長は150センチない感じ。


 いや、マジ合法ロリ……


 「なんか失礼なこと、考えてない?」


 睨まれた。

 危険なので、ロリババアについては以後封印する。


 「私は大崎いち……ご。」

 「は⁉️」

 「いや……大崎いち……ごだ。」

 「はい⁉️」

 「いや……」


 言いよどむのは、空しい抵抗。

 自分の名前、苦手なんだよね。

 可愛すぎる。


 でも、どっかの映画みたいに偽名まで使うのは、ちょっと……


 「大崎(おおさき)いちごだ、いちご‼️大崎いちご、26歳‼️」

 少し赤くなって叫ぶ私に、

 「下妻◯語か」と、千夏が突っ込む。

 

 おや?

 知ってた?


 私達は、王宮の中の言わば客間らしい、高級ホテルの『セミスイート』みたいな部屋で話している。


 私をこの場に呼び出したらしい、主犯の饅頭(千夏は『大福』呼びする『王様』のこと)は、

 「痛い痛い‼️」

 私と同じなら痛い筈がない、ヒールで全快した丸い体を縮め、仮病を使って逃げてしまった。


 てめえ……

 後で覚えてろ。


 「大福の代わりってのが不本意だけれど……」


 ため息混じり、千夏が話してくれるらしい。


 実は今いる部屋を借りてくれたのも、千夏。

 

 饅頭以外にも魔法使いや騎士など、ギャラリー多数で落ち着かなかったので、助かる。


 「まず、いちご。あんたは私と同じ、アルスハイド王国の召喚勇者ね。」

 

 ん?勇者?


 「ああ。異世界から呼び出されし者は、世界の壁を越える時に神の加護がなんたら?

 なんか能力を得るから、勇者?」

 「ラノベか‼️」

 「まあ、ラノベ展開だよね。」


 やれやれと、肩をすくめる千夏。

 私はと言えば、腑に落ちない。


 「ああ、主犯は大福餅ね。」


 全く、なんで『今』だったんだ⁉️

 意味が分からない。

 タイミング、最悪だ。


 「ったく、なんでこのタイミング?」

 つい声に出してしまった、ナース服姿の私に、

 「ああ、勤務中だった?」と、千夏。


 「……卒業式。」

 「は?」

 

 卒業式で、学長にナースキャップを被せてもらい、瞬間『召喚』‼️

 あり得ない‼️

 正式に看護師になって、やっと返せると思ったのに‼️


 「ああ、お気の毒、さま?

 なるほど?だから今時ナースキャップね。

 ま、まあ、中にはトイレでお尻出した途端召喚‼️の人もいるし。」


 千夏がフォローにならないフォローをした。


 「じゃあまず、アルスハイドの成り立ちから話そうか。」





 読んでいただきありがとうございます。

 現代ファンタジー『恐竜がパステルカラーで塗られていても、僕達に反論出来る根拠はない』も、毎朝更新しています。

 よろしかったら、こちらにもどうぞ。




 

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