第4話 魔の森を切り取った国
千夏曰く、ここは『剣と魔法の世界』らしい。
「ちょっと待って。」
ホテルのアメニティグッズのように、部屋にあった紙とペンを取る。
ペンは……
いわゆる羽ペン。インク壺にペン先を付けるタイプ。
紙は……
うーん、わら半紙より酷いな、これ。
茶色でデコボコ。
日本の紙と比べるものでもない。
ここが王宮だと言うことを考えるに(最高のものがある筈だ)、文化のレベルが推察出来る。
完全テンプレ。
ラノベかよ?
千夏がペンで、紙の中央に楕円を書いた。
「?」
「こうなってんの。」
「だから、何が⁉️」
「アルスハイドの地図。」
「饅頭か⁉️」
絵心ないなぁ、この人。
「まあ、国って言っても、ゆっくり馬車の旅で10日くらいで1周出来たし、日本感覚で『県』くらいの大きさね。」
「島根県とか?」
「鳥取県とか。」
右が島根か鳥取か?
そう言うネタがあったなぁ。
いや、だからぁ‼️
「で、この国の周り、全部魔の森。」
……
マ?
魔の森……と言うのも、このテンプレ展開の世界なら想像がつく。
「は⁉️魔物だらけの中に住んでんの⁉️」
「お、魔物、分かるんだ?」
「分かるさ‼️女とみれば襲いかかってくるゴブリンとかだろ⁉️」
「……種族が違うし、性的に襲われたりしないけど、人間をエサと思っている小鬼(ゴブリン)ね。」
二足歩行の豚、オーク。
マッチョマンな大鬼、オーガ。
デカイ鶏(コカトリス?)。
デカイ狼に、デカイ蛇に、デカイ亀。
翼竜みたいなワイバーンに、伝説そのままの姿のドラゴン。
ああ、勢いで強い魔物ばかり想像したが、そう言えばあれ、いるだろうか?
序盤の魔物の代表格、ツルンとしてプルプルしたスライム‼️
夢が膨ら……膨らむかぁ‼️
「マジ⁉️なんでこんな所に国作ってんの⁉️」
「その質問は、日本人は何で日本列島に住んでるの?と同じだよ。」
つまり、千夏でもよく分からないことらしい。
「ただ、こう言う立地の国だから、あちこちで悲劇があって……」
魔物にとっては、アルスハイドは素敵な食料庫以外の何ものでもない。
焼き肉食べ放題(焼いてはいない💦)。
簡単な柵なども作っていたが、そんなものは役に立たなかった。
辺境では、魔物に襲われ一家全滅なんてそこかしこにあり、村ごと無くなるような悲惨な出来事が繰り返されていたんだそうだ。
「で、いい加減嫌になった、この国が手を出したのが勇者召喚ね。」
異世界からの召喚者は、人知を越えた力を持つ。
そこに賭けた。
「初代勇者?」
指差して訊く私に、千夏は肩をすくめて見せる。
「そ。初代勇者……勇者1号だね。」
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