6章 王宮と、聖戦とか言うと格好いいけど要は勇者の内輪もめです

第105話 敵が増えた予感です

 ほむらさんがヤンキー勇者達を返り討ちにして、2週間ほど過ぎただろうか?


 「今朝早く、また勇者らしいのが王都に入ったんだけどさ。」


 珍しく歯切れが悪いいちごさん。


 朝食時の一幕だ。


 いちごさんは凄い。

 なんでこの人が、マイナス勇者なのかわからない。


 以前千夏さんも言っていたが、『プラス』と『マイナス』のイメージは言葉通りというか、『マイナス』の方が劣っている、そう捉えがちと思う。


 ならば、『プラス』でも『マイナス』でもない普通の勇者らしいうちが、いちごさんより優っているかといえば?


 無理。

 ありえない。


 おそらく今は常時発動の魔力感知で、王都への出入りを見張ってくれている。


 寝ている間も『感知』って、休めているのかなぁ、この人。


 今度いちごさんの好きなものでも作って……


 駄目だ。

 米しか浮かばない。


 米好き過ぎるでしょう、この人。


 天然の金髪で、見た目完全に外国人なのに。


 ……

 話が逸れた。


 基本はっきりさっぱりのいちごさんが言い淀んでいるので、

 「なに?」と、千夏さんが聞き返す。


 「入ったのは2人じゃ無い、3人なんだ。」

 「え?」

 「3人って?」

 「鳩君達、2人連れだよね?」


 うちだけじゃない、千夏さん、ほむらさんも驚いている。


 えっ?

 どういうこと?


 ヤンキー勇者さんに仲間が出来た?


 「最近私は、知っている人の魔力なら区別がつくんだ。

 ああ、今出てったのは勇者の宅配便の終だ、とか、また雨月が出かけたけど、たぶんオークをモフってるな、とか。」

 「……」

 「雨月さん……」

 「何やってんだ、あの馬鹿は。」


 雨月さんの思いがけない……

 いや、思いがけなくもないか?

 新たなる奇行を知ってしまうハプニングはあったが、いちごさんが言うには、知っている人の誰とも違う気配だそうだ。


 「千夏が初号機で……」

 「なんとかゲリオンみたいに言うな。」

 「千夏さん……」

 「せめて前半で略そうよ。」

 「今はいない2号、3号は終、4号は会ったことはないけど農家だったか?」

 「ああ。」

 「旅をする夫婦の5号と6号、7号は雨月……」

 「……」

 「ここからヤンキー勇者の15号まで全く知らない。18号の朔夜以降も欠番だ。正直と健介以外は。」

 「……」

 「なあ、千夏。誰だと思う?」


 尋ねられ、しばらく黙りこくった千夏さんが、珍しく感情を顕わにした。

 

 「くそっ‼なんでよ⁉」


 千夏さん曰く、一度も話題にしていない欠番勇者達は、どうせ元の世界に戻れないならと野に下った。


 「あいつらは良くも悪くも日本人で、当たり前を愛してるんだ。特別じゃない、普通の幸せを。」


 勇者の力は利用しない。

 戦う能力があることさえ隠し、当たり前の庶民として埋没することを選んだ。


 「全員王都じゃ目立つからって、適当な地方都市や町や村で、この世界の当り前を生きている。

 そう簡単に戻って来ない。」


 なら、3人目は?


 「嘘でしょ、力……」



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