第114話 獅子身中の虫
頭の中で、深夜偶然目にしたことがある、プロレスのテーマミュージックが鳴り響いて……
「ったく……」
隣から、ドン‼️ドン‼️と派手な音がする。
プロの総合格闘家だっただけあって、いちごは派手好き……と言うか、敢えて周囲に気を配らず動くタイプ。
思い切り屋根を破壊して、『衝撃の展開』を演出している。
あれ?
総合格闘技とプロレス、一緒にしたら不味いかな?
宿屋の主人には、『金銭的保証』で納得して貰った。
初代勇者の知名度、使わせて貰ったよ。
「モンスターですか⁉️」
血相を変えた主人に、
「獅子身中の虫です。」
と、答えた。
この言い回し、アルスハイドには無いのかもしれない。
首をかしげていたから、
「モンスターじゃないですよ」と、添えておいた。
さて……
わたしも行くか。
いちごほどの派手な演出はいらない。
空間魔法で屋根の一部を異空間に飛ばす。
屋根に、直径2メートルほどの穴が空いたよ。
……
ヤバい……
やり過ぎ……
いや、わたし1人が通るだけだから、この半分以下で良かったよ。
いちごの派手演出がうつった。
明るさが大きく変わったのだろう。
魔法を使っているから無音だったはずが、部屋の中から4組の目が見上げていた。
力は……
一瞬驚き目を見開くが、すぐにニヤリと笑って見せる。
力、あんた……
悪役面似合うわぁ。
なるほど、彼は変わっていない。
そして15号は……
やはり驚いた顔をしたあと、ばつが悪そうに 目を反らした。
うん、確かに。
ほむらの言うように、自らすすんで、わたし達と敵対しているとは思えない。
そして、スキルの存在を確信したのは、残る2人……
力の同居人である少年少女の反応だった。
2人は勇者ではない、普通の人で、しかも年若い。
屋根にいきなり穴が開くなんて異常事態、大騒ぎになってもおかしくないのに⁉️
2人は少し目を向けただけ、ほとんど反応が無かったのだ。
明らかに異常。
心が動いていない。
必ずそこにはからくりがある。
4人の前に降り立つと、
「久し振りだな、神様の寵児」と、力がいつも通り絡んでくる。
「1年ぶりくらい?常勝農家。」
「だな。
……さて。」
分かりやすく、右こぶしを握り込み、左の手のひらにぶつけながら、
「このままじゃ、戦うことになるが?」
と、薄ら笑う。
「だね。このままならね。」
瞬間、一陣の風が吹き抜ける。
相変わらず速いなぁ。
瞬きする間に室内を駆け抜け、その後屋根の上に登った終が、
「ほい‼️ちびども確保だ‼️」
と、声を上げる。
その腕には、少年少女が抱えられていた。
「もういいぞ、農家‼️」
「ありがてぇ、スピード狂‼️」
振り上げようとしたこぶしを。
力はそのまま15号に叩きつけた。
吹っ飛ぶ、鳩君(大)。
……
まあ……
そうなるわな。
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