第115話 15号<16号か、15号>16号か?

 4号の……

 田畑さんの拳が迫ってきた時、

 『ああ、これは罰なんだ』と思っていた。


 ヤンキー高校で盾役だった僕。


 相手の攻撃を避ける器用さも、タイミングよく攻撃を入れる上手さもない。


 だからひたすら首をすくめて耐えるだけの存在だったが、異世界に召喚された今、身体能力は当時より大幅に上がっている。


 本気なら避けられた?


 いや、それは無理でも、『硬化』のスキルくらい使って実質攻撃を無効化出来た。


 でも……


 それは何か違う気がして。


 ゴキン‼と、物凄い音がした。


 いや、手加減無さ過ぎ‼


 ……

 ううん、それくらい怒らせたと言うことだろう。


 確実の頬骨が砕けているし、

 『もしかしたら顔半分無くなっているんじゃないか?』の痛みとともに、吹き飛ばされて壁に当たる。


 僕のしょぼい回復魔法では、1回では治すことが出来ない。

 何度も『ヒール』を重ね掛けしながら、唱えるごとに少しずつ世界は輪郭を戻し、声もはっきりしてきていたが、それでも抜け切らないダメージの下で聞いている。


 「お前‼……中川って言ったか⁉

 もう少ししっかりしろや‼

 自信を持て‼

 明らかにお前の方が、和泉とかいう馬鹿小僧より強いだろう‼

 操られてんじゃねえ‼」


 吐き捨てたのは、田畑さんだ。


 操られてる?

 何が?


 「ああ、力もわかってたんだ。」


 女性の声は?

 ……幸田さんだ。

 初代勇者。


 空間魔法で屋根を削り、部屋に飛び込んできたことを思い出す。


 彼女も僕が『操られている』と思っている?


 「そんなの当然だろ?

 うちのちび共の反応見てりゃわかる。いきなり感情ぶっ飛んでるじゃねえか。」

 「そりゃそうか。」

 「変な影響が残っちゃ拙いから、無理に奪い返そうとしなかっただけだ。

 ちっ、あのクソガキが。ふざけやがって。」


 急に立ち上った殺気に震え上がった。


 周囲全てを圧倒するような、押しつぶされそうな気配。


 怖い。

 本気で怒っている?


 でかい図体をしていても怖くて堪らないのに、

 「ま、まだ謎な部分も多いから、ぶちのめすのは後にしてね」と、至極平然とした幸田さんの声。


 ……

 怖く、ないんだ?


 勇者ナンバーが早い人達と僕らでは、圧倒的に実力が違う。


 わかっていた。

 どうやっても勝てない相手で、しかも『この世界をあるべき姿に戻す‼結界を壊す‼』なんて、間違ったって納得いかない理屈に踊らされた。


 してはいけないことだと分かっていた。

 身勝手な、間違った理屈だと分かっていた。


 なのにどうしても逆らえない。


 僕は一体?


 「おーい、取り敢えずさぁ。」


 急にサブの寝室のドアが開き、そこから初めて見る人が出てきた。


 金髪頭のヤンキー姉ちゃん。


 僕には馴染みの姿に見えたが、たぶん彼女も勇者だろう。


 つまり、そこにいたはずの勇作さんは制圧されてしまった。


 間違いない。


 「そのでかぶつと子供達、一旦この建物から出してくれる?

 それでこの馬鹿のちゃちなスキルなんて解除出来ると思うから。」

 「わかった。やっぱ、あれ?」

 「そう、魅了ってヤツね。」


 魅了?



 

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